大阪大学大学院の白石優季大学院生と加藤隆史教授らの研究グループは、眠っている子どもの歯ぎしりが睡眠周期に合わせて繰り返し増減することを世界で初めて明らかにした。
夜間睡眠中に歯ぎしりをする睡眠関連疾患は睡眠時ブラキシズムと呼ばれ、子どもでは約20%に発生する。ひどい歯ぎしりによって、乳歯が大きく擦り減ったり、顎に痛みが生じたりすることがあるがメカニズムは不明だ。解明には睡眠や発達に問題がない子どもの協力を得て、睡眠中の脳や心臓、呼吸、顎の筋肉の活動を記録しなければならず、生体信号データを分析する専門技術も必要なため、世界的に研究が進んでいない。
今回、研究グループでは、専用の睡眠検査室を同大学大学院歯学研究科に整備し、6~15歳の子どもに睡眠検査を実施した結果、44人中15人(27.3%)の子どもに歯ぎしりを認めた。一晩の睡眠の深さや自律神経系活動の変化を数値化したところ、歯ぎしりをする子どもでは、各睡眠周期の後半でレム睡眠へと移行する浅いノンレム睡眠で、最も頻繁に歯ぎしりが発生していた。
また、体動(寝返り)の数や脳の覚醒の指標である脳波(β波)の活動は、歯ぎしりをする子どもの方が高い値を示し、約90%の歯ぎしりが短い覚醒や体動とともに発生していた。以上より、健康な子どもの歯ぎしりは、睡眠周期に伴う脳内活動の変化に対して、歯ぎしりをする顎の神経機構が過剰に反応して生じる可能性が明らかとなった。
今回、子どもの歯ぎしりの発生には、睡眠周期にともなう脳機能の変化が伴っていることが分かった。これにより、診断方法や治療法に向けた新たな研究への発展が期待できるとしている。