東北大学災害科学国際研究所の浩日勒助教らの研究グループは、デングウイルス感染症において、重症度マーカー蛋白のオステオポンチン(OPN)が単球由来株化細胞でデングウイルス感染により誘導されることを明らかにした。さらに、このウイルスによるOPN の産生を細胞性粘菌成分のbrefelamideが抑制するばかりでなく、デングウイルス自身の細胞からの放出を防ぐ可能性も示唆した。
デングウイルス感染症は、蚊媒介感染症で、世界中で年間4 億人弱が感染し、1 億人近くが発症するとされている。輸入感染症例がほとんどだった日本でも、近年は国内での発症が見られる。また全世界でデング出血熱などの重症例によりおよそ2万5,000人が死亡している。本研究グループでは以前、OPN がデング感染患者血漿中で極めて高く、それが重症度・出血傾向と相関していることを発表していた。
今回、研究グループはその発表を発展させ、東北大学で樹立されたヒト単球由来のTHP-1 細胞にデングウイルスを感染させるとOPN の遺伝子・蛋白レベルの発現が著増することを見出した。また、そこにOPN の産生を抑制することが知られている細胞性粘菌成分の brefelamide を添加することによりOPN の産生が抑制され、デング感染症における炎症を抑制する可能性を明らかにした。加えて、brefelamide にはウイルスの放出を抑制する作用があることも明らかにし、今後の研究課題とした。
この発見はデングウイルスの重症化に関わるOPN を標的とした、新しい治療法の存在の可能性を示唆するものとして注目されている。