東京工業大学物質理工学院応用化学系の高田十志和教授、石割文崇助教らの研究グループは、医薬品開発などにも応用可能な優れた不斉源の開発に成功した。

 有機化合物の多くは、鏡に映した像が元の像と重なり合わない(右手と左手の関係)「不斉(キラリティ)」という性質を有している。医薬品の場合、この右手か左手かの差で薬になったり毒になったりするため、どちらか一方を選択的に合成・識別・分離することは常に大きな研究テーマである。

 ロタキサンなどの化合物は、これまでの研究により、不斉ではない輪状分子と不斉ではないダンベル状分子の絡み合いによって、「トポロジカルキラリティ」という特徴的な不斉が発現することが分かっている。しかしながら、元々の構成成分には不斉がないこれらの分子が、果たして不斉源として機能するのかは長年の疑問だった。

 今回、同研究グループは、トポロジカルキラリティであるロタキサンを不斉源として用いても、通常の不斉源と同様に、一方巻きらせんを誘起可能であることを初めて発見し、疑問に対する答えを得た。また、驚くべきことに、不斉源として一般的な「点不斉」を加えても、点不斉は一方巻きらせんを誘起せず、トポロジカルキラリティに基づく一方巻きらせんのみが誘起された。このことは、トポロジカルキラリティを有する化合物が従来の不斉源よりも優れた機能を持つことを示唆している。

 本成果は、今後、不斉分子の選択的合成・認識・分割を達成する優れた機能分子の開発につながると期待される。

論文情報:【Angewandte Chemie International Edition】Induction of Single-Handed Helicity of Polyacetylenes Using Mechanically Chiral Rotaxanes as Chiral Sources

大学ジャーナルオンライン編集部

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