明治大学の宮下芳明教授の研究グループは、キリンホールディングス株式会社との共同研究により、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形を開発した。健康的食習慣への貢献が期待される。
日本人の1日当たりの食塩摂取量はWHO(世界保健機関)の食塩摂取基準と比較して非常に多い。近年、健康志向の高まりから、国内減塩・無塩食品市場は拡大を続けているが、キリンの調査では減塩食の味に不満を抱えている人が多いという。減塩食をおいしく続けられれば、健康課題の改善、さらに減塩・無塩関連市場のさらなる拡大につながる可能性がある。
研究グループはこれまで、人体に影響しないごく微弱な電流を用いて疑似的に食品の味の感じ方を変化させる「電気味覚」の技術の活用について研究を行ってきた。その研究成果として、今回、減塩食の味わいを増強させる独自の電流波形を開発。減塩をしている/していた経験のある40~65歳男女31名を対象にした臨床試験で、試験用食品を食した際に感じた塩味強度について、31名中29名が「塩味が増した」と感じたと回答。減塩食に感じる塩味が約1.5倍程度(塩味強度の評価変化値)に増強されることを世界で初めて確認した。
キリンはこの技術を搭載した「エレキソルト」デバイス、「エレキソルト -スプーン-」と「エレキソルト-椀-」を開発。微弱電流の4段階調節で好みの塩味強度を選択できる。塩分を控えた食事をセットで提供して食事満足度を評価する実証実験を、株式会社ノルト、株式会社オレンジページと共同で開始し、「エレキソルト」デバイスの発売(2023年)を予定している。おいしく生活習慣の改善ができる社会の実現を目指すとしている。