立命館大学の道関隆国教授はUHF帯の電波を使い、ドローンのようなマルチコプター向けの無線給電手法を開発しました。これまでの無線給電システムで問題だった、送電距離が変わる場合の効率低下をクリアすることに成功しました。
近年急速に注目を集めているドローンはどのような場面で利用できるかが検討されている中、無線を用いて直接触れることなく給電する方法の開発も急がれています。実用化されている無線による給電は電動歯ブラシの充電などに用いられているものがあり、コイルから発生した低い周波数の電波を使って送電を行っています。しかしこの方式で大きな出力で送電するためには、コイルを数十cm以上に大型化する必要がありました。また送電側と受電側が1対1でなければならない、送電対象との距離が変化すると効率が極端に低下するという問題がありました。
これを解決するために開発したのはコイルではなく、金属板でできたバッチアレイというタイプのアンテナから出る高い周波数の電波を使う方法です。複数への対象への送電が可能で、遠方での効率もそれほど落ちないという利点があります。また、受電側のアンテナも改良を行いました。アンテナとプロペラを別個に搭載するとスペースを取ることから、これらを一体化することを考えました。プロペラは回転するため、ただ一体化したのでは配線が絡まってしまいます。これを回避するよう回路の設計も行いました。こうして開発した電力の送受信装置を、バッテリを持たないマルチコプターに実装した結果、10cm程度の浮上に成功しました。送電効率の面では20~25%程度を達成したことになります。今後は高効率化を進めていくとともに、浮上距離をさらに伸ばしていくとしています。また、プロペラのように回転するジャイロやインホイールモータへの給電など、マルチコプター以外の応用先の検討も行っていくようです。