生活の中で得る新たな出会いや経験を「新しい」と認識する「無知の知」を前頭葉の先端部にある前頭極と呼ばれる領域が自覚していることを、順天堂大学大学院医学研究科の宮本健太郎研究員、長田貴宏助教、宮下保司特任教授らの研究グループが突き止めた。「無知の知」を生む脳の仕組みが解明されたのは世界で初めてで、米国の学術誌「ニューロン」電子版に掲載された。
自分にとって未知の出来事を「新しい」と判断する能力は、高度な認知情報処理能力が必要になるため、ヒト特有のものと考えられてきたが、研究グループは過去の霊長類のマカクサルを使った実験で前頭葉に既知の出来事に対する確信度判断に貢献する部分があることを突き止めていた。
そこで、研究グループはサルに対し、ある図形を記憶しているかどうか実験し、実験中の脳の神経活動を磁気共鳴機能画像法で計測したところ、前頭葉の前頭極が活発に活動していることを見つけた。
さらに、薬物を投与して前頭極の活動を抑えると、サルは未知の図形に対して確信的な判断を見せることができなくなった。ただ、前頭極が既知の出来事に対する確信度判断に寄与している兆候は見られなかった。
研究グループは前頭極の活動が無知に対する自己意識を生み出す働きを担い、「無知の知」を自覚するヒトの能力が霊長類の大脳に進化的起源を持つとみている。