日本で処方されている漢方薬の源流が奈良時代に来日した中国・唐の僧・鑑真和上にあることを、岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域の松尾俊彦教授、上海交通大学医学院の劉詩卉眼下医師(研究当時岡山大学特任助教)らの研究グループが解明した。
岡山大学によると、鑑真和上は中国揚州生まれの高僧。奈良時代の日本に仏教の戒律とともに、漢方薬をもたらしたと伝えられている。しかし、漢方薬の一部が平安時代の医学書「医心方」に記述され、奈良県奈良市の東大寺正倉院に所蔵されているものの、全容が分かっていなかった。
劉医師は現代中国の廃版となった書籍「三宝問世(鑑真秘伝三宝)」に鑑真和上が日本にもたらした漢方薬の全容を見つけ、その著者である雷雨田氏が鑑真和上の漢方薬と同じものを代々受け継いできた家系の52世であることを突き止めた。
日本では保険診療で西洋医学の薬と漢方薬を同時に処方することができるほか、漢方薬が一般用医薬品として薬局で販売されている。劉医師らは鑑真和上が日本にもたらした36種の漢方薬素材とその処方を現代の日本で販売されている漢方薬と比較した結果、このように整理され、体系化された日本の漢方薬処方の源流が鑑真和上にあると結論づけている。