日本イーライリリー株式会社は、企業・自治体・専門家と共同で取り組む「みえない多様性PROJECT」の新たな展開として、プロジェクト初となる慶應義塾大学の学生とのワークショップイベントを2022年10月28日に実施した。

 日本イーライリリーでは、片頭痛や生理痛、腰痛などの痛みや不調など、症状の可視化が難しくつらさや支障の認知が低い健康課題を「みえない多様性」と定義。不安やつらさを抱える当事者とその周囲にいる人が互いに理解し合い、誰もが安心して働ける職場づくりを目指して2020年に「みえない多様性PROJECT」を発足した。

 一方、慶應義塾大学では、従来からお互いの人格を尊重し多様な価値観を認め協力して生きるための環境を構築し、多様性の受容に関する課題に迅速に対処するための様々な取り組みを行っており、「みえない多様性PROJECT」の趣旨に共感。今回、日本イーライリリーと共同でワークショップを開催することになった。

 ワークショップでは、誰もが当事者になりうる「病気や体の不調」の観点で他者の背景を想像することで、多様な違い・考え・価値観に気付くとともに、相手の立場や「ダイバーシティ(多様性)とは何か?」を考える機会を学生に提供することを目的に、講義とグループワークを行った。

 当日は23名の学生が参加。前半の講義では、日本イーライリリーから、「みえない多様性」の考え方や影響について代表的な疾患の一つである片頭痛を例に紹介した。後半のグループワークでは、みえない多様性PROJECTで開発した「ストーリーカード」を用い、他者の見えないつらさを想像するカードゲームを実践した。

 カードゲームを通じて、学生たちは、周囲の人から見ると一見不可解に思えたり自己中心的な振る舞いに見えたりする他者の行動でも、実はその裏には「もしかしたら周囲からは見えない病気や不調など何か隠れた理由=“みえない多様性”があるのかもしれない」と当事者の立場になって想像し、どのように理解し、受け入れ、対応していくのかについて話し合った。

 参加した学生からは「身体的な苦しさと、その苦しさを他の人に言えないことで苦しみが増えてしまうという、社会的な苦しみの2種類があるということに気付いた。社会的な面での苦しさを取り除くためには、言いたいことを何でも言えるようなオープンな環境が求められているのだろうと思った。ただ、プライバシーなことをどこまで伝えていいのか、聞く側もどこまで聞いていいのか。その二つのバランスをとることも重要」「グループで話し合う中で、実は私・・と体の不調や悩み事なども共有した。印象的だったのは、今まで周りの人に言ってなかったことが、話してみると意外と周囲の人と共感できることがたくさんあるということ」など、感想が寄せられた。

参考:【日本イーライリリー株式会社】大学生が片頭痛や生理痛など他者の“見えないつらさ“を想像する「カードゲーム」にチャレンジ! “目には見えにくい”健康課題の理解促進に向けて「みえない多様性ワークショップ at 慶應義塾大学」を開催(PDF) 

慶應義塾大学

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。