村田製作所、大阪大学、中部大学、香川大学、京都府立医科大学からなる産学連携チームは、ナノテクノロジーに関する世界最大級の総合展・技術会議「nano tech 2018」(2月14~16日、東京ビッグサイト)で産学連携賞を受賞。受賞理由は手のひらサイズのセンサーを使いインフルエンザウイルスを短時間で測定できる技術の開発だ。
このセンサーに唾液や糞を付着させると、ウイルスが数個含まれれば数分で検出できる。従来の技術ではウイルスを100万個程度まで増やさないと検出できなかった。新型センサーは、例えば死んだ鳥の糞を検査してヒトに感染するウイルスが含まれるとわかれば、海外産なら未然に輸入を防げる。動物園で死んだ鳥が感染していれば、速やかに対応策を講じることができ、従来のように長期間休園しなくてもすむ。現在はヒトに感染する鳥インフルエンザの検査を目的にしているが、糖鎖の種類を変えれば様々なウイルスに対応できる。研究チームは今後、吐息でも様々なウイルス感染がわかる小型センサーの開発も目指すとしている。
センサーには2010年にノーベル物理学賞受賞対象となった炭素素材グラフェン(シート状炭素分子)を用いた。グラフェン表面にヒト由来の糖鎖を修飾しておく。糖鎖が唾液などに含まれるインフルエンザウイルスと結合すると電流が変化する。センサーにはUSB端子が付いており、パソコンから電源を供給できる。5年以内の実用化を目指すという。
今回、産学連携賞の対象となったのは、科学技術振興機構(JST)が推進するプログラムの1つCRESTの中のテーマ。タイトルは「糖鎖機能化グラフェンを用いた二次元生体モデルプラットフォームの創成」。大阪大学の松本和彦教授が代表を務める。