慶應義塾大学の小林宏充教授らの研究グループは、同大学の主に1年生を対象として科学用語等に関するアンケート調査を実施し、主に10年前の調査結果と比較した。その結果、科学知識を獲得する媒体は新聞からインターネットへ大転換し、大学1年生女子の物理コンプレックスが大幅に減少したことが明らかになった。
研究グループはこれまで10年ごとに科学や物理学に関する関心度や知識度について、主に大学1年生について調査を実施。今回、慶應義塾大学の文系学部の1、2年生(回収数238[52.1%])および理工学部の1年生のおよそ半数(回収数249[49.1%])を対象に、科学用語の知識と興味度、物理コンプレックスなどの調査を2022年5月に実施し、10年前の調査結果と比較した。
その結果、科学知識を得る媒体は、新聞からSNSやYouTubeなどの動画を含むインターネットへ大転換。新聞など紙ベースの活字体離れには歯止めが効いていない。テレビは微減を続け、傾向を知るには今後も調査が必要という。
一方、科学コンプレックスを感じる時期は、10年前と変わらず学校が変わる時期だった。小中高と教科書のレベルが上がるときにギャップを感じると思われる。文系では、受験科目に数学を選択して入学した経済学部・商学部の学生は、物理にコンプレックスを感じない割合が高いのも昔と同様。理工学部では、前回と変わらず化学・生命科学系の学生は、物理にコンプレックスを感じる割合が高くなった。
また、全体的にコンプレックスを感じない学生が増加し、文系女性の物理コンプレックスが顕著に減少した。科学用語では、RNAや量子計算機など最近よく耳にする用語の知識度が増加し、特に量子計算機の興味度が増加した。
論文情報:【慶應義塾大学日吉紀要自然科学】大学一年生の自然科学への興味度と知識度2022年度調査―主に10年前との比較―