筑波大学の研究グループは、全日本柔道連盟の全面協力の下、全日本強化合宿に参加したトップ柔道選手らの睡眠の質を調査した結果、他のトップアスリート集団よりも睡眠の質が比較的悪く、その要因がメンタルヘルスにあることを明らかにした。
日常的にハードなトレーニングを行うアスリートにとって、良質な睡眠の確保は不可欠である。そのため、トップアスリートの睡眠の質に関する研究が盛んに行われているが、これまでトップ柔道選手に関する研究はほとんど実施されていなかった。
本研究では、2017年12月~2018年1月に全日本強化合宿に参加したトップ柔道選手たち(東京2020オリンピック競技大会でメダルを獲得した12人を含む)を対象に、睡眠の質の状況や、それに関連する要因を検討した。
完全回答が得られた86人のデータを分析した結果、主観的な睡眠の質が「不良」と判定された選手が約4割に達した。この割合はこれまでに報告された他のトップアスリート集団の研究結果と比較すると同等か悪い傾向にあり、トップ柔道選手の睡眠対策の必要性が示唆される。睡眠の質を構成する因子のうち、特に入眠時間、睡眠時間、日中覚醒困難の三つが不良と認められ、すなわち寝付きが悪いこと、睡眠時間が短いこと、日中に強い眠気に襲われることがトップ柔道選手の主な問題であることが示された。
さらに、生活習慣、競技活動、競技ストレッサー、メンタルヘルスなどの項目と睡眠の質との関連を検討した結果、メンタルヘルスのみがトップ柔道選手の睡眠の質と有意な関係を認めた。メンタルヘルスが不良な者は、良好な者に比べて、睡眠の質が不良となる確率が約3倍であったという。
このことから、トップ柔道選手の睡眠の質を左右する鍵がメンタルヘルスにあることが明らかとなり、競技力のさらなる向上につなげるためには、メンタルヘルス支援体制の整備を早急に検討することが求められるとしている。