大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、アルコール摂取量と腎臓病のリスクを評価したこれまでの疫学研究結果をメタ解析の手法を用いて統合した。その結果、一般に推奨されているアルコール摂取量20g/日(日本酒約1合)程度の適度な飲酒は腎臓病の予防に有効だが、60g/日程度(日本酒約3合)以上の大量飲酒は蛋白尿のリスクになることが明らかとなった。
これまでに、少量~中等量の飲酒が腎臓病のリスクを低下させることは多数報告されているが、大量飲酒が腎臓に及ぼす影響を評価した研究は少なく、一定の見解が得られていなかった。
本研究では、網羅的な文献検索(システマティックレビュー)によりアルコール摂取量と腎臓病の関連を評価した11の研究報告(総対象人数14,634,940人)を抽出し、メタ解析した結果、蛋白尿(尿蛋白≧1+)のリスクは、アルコールの少量摂取(≦12g/日)者では非飲酒者と比較して0.87倍に低下する一方、36~60g/日では非飲酒者の1.09倍、>60g/日では1.15倍と、大量摂取では蛋白尿リスクの上昇を認めることを明らかにした。腎機能低下(糸球体濾過量≦60mL/分/1.73 m2)のリスクについては、アルコール摂取量30g/日程度までは0.82倍に低下し、それ以上の摂取量ではほぼ横ばいとなった。
本研究は、大量飲酒が癌や心血管疾患のみならず腎臓病のリスクでもある可能性を明らかにすると同時に、適度な飲酒量として推奨されているアルコール20g程度ならば蛋白尿発症および腎機能低下のリスク減につながることを示した。適度な睡眠や禁煙と同様に、適度な飲酒を心がけることによって、心血管系疾患や死亡の重要なリスクである腎臓病の予防にも繋がることが期待される。