北海道大学触媒科学研究所の研究グループは、メタンを従来法より250℃以上低い650℃で水素と一酸化炭素に変換させる触媒を新たに開発した。
天然ガスの主成分であるメタンは、燃やした時に発生する二酸化炭素の量が石油の約半分であるため、クリーンなエネルギー源として知られる。さらに近年、非在来型の天然ガスであるシェールガスの採掘が可能となり、メタンの資源としての利用に注目が集まっている。
メタンから液体燃料や化成品を作るには、まず水素と一酸化炭素へ変換する必要がある。しかし、この変換には、現在の工業プロセスでは一般に900℃以上の高温で水蒸気と反応させなければならず、より低温で効率的な反応の開発が望まれていた。
本研究では、水蒸気の代わりに空気中の酸素をメタンと反応させる方法を用い、新規に開発した触媒を使用することで、650℃でメタンを変換することに成功した。この新しい触媒は、ゼオライトと呼ばれる微細な穴が開いたケイ素とアルミニウムの結晶性酸化物に、主活性成分であるコバルトのナノ粒子を乗せ、そのコバルト粒子の表面に微量のロジウムを単原子レベルで分散させたもの。コバルトは比較的豊富で安価だが、酸化されやすいという欠点をもつため、貴金属であるロジウムをごく少量コバルトの表面に付けることによりこの問題の解決を図った。結果、ロジウムがコバルトを活性な金属状態に保ち、安定して高い活性を示す触媒が実現された。
今後、この触媒設計に基づいて、メタンをより効率的に利用するためのプロセス開発と、天然ガスの利用進展が期待される。