東北大学学際科学フロンティア研究所の小嶋隆幸助教らは、「ホイスラー合金」という特殊な合金群が、アルキンの選択水素化反応に対して優れた触媒になることを発見したとともに、この合金群で触媒機能の精密制御が可能であることを明らかにした。
触媒反応は、反応分子と触媒表面の電子のやり取りを介して進行するので、触媒表面の元素種やその配列および触媒の電子状態が重要な因子となる。整数組成比で規則的な原子配列を有する「金属間化合物」は、ユニークな表面規則構造および電子状態を有するため、新規触媒として近年注目を集めるようになってきた。
本研究グループは、金属間化合物の一種であり、磁性・スピントロニクス材料、熱電材料および形状記憶合金として有名な「ホイスラー合金」に着目。触媒としては無名であったが、元素の組合せが無数に存在すること、第四元素置換が可能であることから、触媒機能をチューニングできる新規高機能触媒の発見につながると考えた。
今回、いくつかのホイスラー合金で、アルキンの選択水素化反応に対する触媒特性について詳しく調べるとともに、第四元素置換による触媒機能制御を試みた。その結果、ホイスラー合金が、比較試料とした純コバルトよりも高いアルケン選択率を保持できること、元素置換によって触媒特性を系統的に制御できることが実証された。
今回発見した優れた触媒は貴金属を含まないため、貴金属代替触媒として期待されるほか、同じ結晶構造を保ったまま元素置換による変化の効果を独立に利用することができるため、金属間化合物触媒のメカニズム解明のためのプラットフォームとしても利用できると期待されている。