神戸大学大学院の佐賀達矢助教は、米オーバーン大学の国際研究チームに参加し、ミツバチと社会性カリバチは巣作り中に生じる建築上の問題に対して、互いに独立して、同じ幾何学的な解決策をとるように進化していることを明らかにした。
ミツバチ属と社会性カリバチのクロスズメバチ属は、1億7900万年前に互いの祖先から分岐して進化したとされる。どちらの働き蜂も大きな繁殖虫(新女王とオス)となる幼虫を大きい六角形の部屋(育房)で、働き蜂になる幼虫を小さい六角形の育房で育てる。しかし、2つの異なる大きさの六角形の育房は、1枚の巣盤に規則正しく並べられない。それぞれの蜂がこの問題にどのように対処しているのかは不明だった。
研究グループは、ミツバチ属とクロスズメバチ属の各5種の巣の写真を集め、2万2745育房のデータを分析。その結果、どちらの蜂も、小さな育房と大きな育房の間の移行部で、サイズ差が大きくなるにつれ、働き蜂が六角形以外の育房を作っており、ほとんどが五角形と七角形の育房のペアだった。また、2種類の育房の大きさの差異が小さいと、間に中間サイズの六角形の育房を作っていた。
六角形の育房からなる巣盤の構造を数学的にモデル化して予測したところ、大きさの異なる育房間の移行部で、実際の蜂の巣で見られる中間の大きさの育房と五角形・七角形の育房から巣盤が作られるパターンが生成された。
今回の研究成果は、どちらの蜂も巣作り上の建築的課題に、互いに独立して同じ幾何学的解決策に至ったことを示す。複数の動物個体が協力しつつも、中央集権的な制御を受けずにいかに適応的な構造物を構築しているかについての理解を深めるものとしている。