北海道大学の山田朋人准教授らの研究グループは、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を用い、北海道の将来の極端降水量が顕著に増加することを明らかにした。海洋研究開発機構、気象庁気象研究所、国土交通省北海道開発局、北海道との連携による成果だ。

 平成28年8月、北海道に観測史上初の3個の台風が上陸し甚大な被害が発生。国土交通省北海道開発局と北海道は共同で水防災対策検討委員会を設置し、北海道における「気候変動による将来の影響を予測・評価し、具体的なリスク評価をもとに、治水対策を講じるべき」だとした。これを踏まえ、北海道地方の気候変動影響のリスクについて科学的予測が行われた。

 計算は「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」を基に、気象庁気象研究所の地域気候モデルによって水平解像度5kmの高解像度「大規模アンサンブル計算」(注)を実施。計算には膨大な計算資源が必要となるため、海洋研究開発機構のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」が使用された。

 その結果、解析対象の十勝川流域・常呂川流域では、将来的に降雨量や1時間あたりの強い雨の頻度が顕著に増加することが分かった。また、十勝川流域では、浸水面積が4割、浸水家屋数が2割増加し、常呂川流域では、浸水面積が3割、浸水家屋数が4割増加、想定死者数は約6~13倍増加し、浸水深が大きくなる影響で人的被害が著しく増加することが分かった。

 今後は、他の河川流域への影響や、中小河川や山間部における気候変動の影響の現れ方について分析を進め、今回実施した計算に基づく詳細な降雨データを用い、将来の洪水リスクの変化を定量的に予測する検討を進めるとしている。

注:数値計算の誤差を考慮し、初期値などの計算条件をわずかに変更して計算を複数行うこと。

論文情報:【土木学会河川技術論文集】北海道地方における気候変動予測(水分野)技術検討委員会:技術検討委員会【最終とりまとめ資料】(詳細)(PDF)

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