大阪大学とロート製薬の共同研究グループは、基底膜タンパク質ラミニンの種類を使い分けることで、iPS細胞から異なる眼の細胞である「神経堤細胞」、「角膜上皮細胞」、「網膜・角膜を含む多層構造」へ選択的に分化誘導可能なことを示した。
iPS細胞は無限に増殖し、我々の身体を構成する様々な細胞に分化可能なことから、再生医療や発生研究に非常に有用な細胞である。同研究グループは、これまでに、ヒトiPS細胞から眼全体の発生を模倣した2次元培養系を用いて、様々な眼の細胞を含む多層状コロニーを誘導し、機能的な角膜上皮組織(iPS角膜上皮シート)を作製することに成功している。iPS細胞がどのような細胞になるかという運命決定においては、培養液だけでなく、細胞の足場となるラミニンも重要な役割を果たすことが報告されているが、SEAMの発生におけるラミニンの役割は分かっていなかった。
そこで、今回、同グループは、足場がiPS細胞に与える影響について研究し、ラミニン211は、iPS細胞を神経堤細胞へ、332は角膜上皮細胞へ、511は網膜・角膜等を含む多層構造へ、とそれぞれ異なる細胞へと誘導することを示した。さらに、iPS角膜上皮シートの元となる多層状コロニーの形成過程には、YAP(転写共役因子)が関与することが示唆された。
本成果により、iPS細胞の足場による運命決定制御機構や眼の発生機序の解明、さらには角膜再生医療実用化に向けたiPS角膜上皮細胞の作製効率化が期待される。