神戸大学大学院の田中悠暉大学院生らの研究グループは、独自に開発した「構造色インク」を用いることにより、世界最軽量クラスの構造色塗装が可能であることを実証した。
最近、退色しない着色技術として構造色が注目されている。それ自体が「色」をもたない材料の微細構造が周期的に配列して発色するというもの。周期構造による光の干渉や回折により発色し、見る角度で色が玉虫色に変化する。従来の数百ナノメートルの微粒子が3次元に配列した構造では周期構造の精密な作成を要し、塗布や印刷プロセスによる着色ができなかった。
研究グループはこれまでに、ケイ素ナノ構造が示す「Mie共鳴」現象を利用した、特定波長光の強い散乱による発色手法を開発し、粒径によって発色が変化する「構造色ナノ粒子インク」を世界で初めて実現した。
今回の研究では、構造色ナノ粒子インクを用いて、ガラス基板上にシリコンナノ粒子の単層膜を形成し、発色特性を調査した。その結果、単層膜は粒径に依存して紫~橙色の構造色を示し、斜め45度から観察してもほとんど変化せず、従来の構造色と異なり角度依存性が非常に小さかった。また、ピーク反射率は30~50%で、シリコンナノ粒子の単層膜によって十分に明るい構造色が実現できた。
さらに、シリコンナノ粒子単層膜を部分的に酸化して疑似的に粒子間の距離を大きくしたところ、基材上にシリコンナノ粒子がまばらに散在した状態(単層膜よりも少ない粒子数)でも構造色によって着色できた。
今回の成果から、従来の塗料よりはるかに少ない量で着色塗装が可能となり、例えば、数100キログラム必要な大型航空機の塗装を、1/10以下に軽量化できる可能性があるとしている。
論文情報:【ACS Applied Nano Materials】Monolayer of Mie-Resonant Silicon Nanospheres for Structural Coloration