東京大学の研究グループは、細胞が遺伝子のコピー数を数え安定数を維持する仕組みを持っていることを初めて明らかにした。
生物は、さまざまなタンパク質を合成することで細胞の機能を維持している。そのため、タンパク質合成を担うリボゾームを大量に安定供給しなければならない。
リボゾームはタンパク質とリボゾームRNAから構成され、多量のリボゾームRNAの供給には、それをコードするリボゾームRNA遺伝子が同じ遺伝子の反復(リピート)遺伝子として安定に保持される必要がある。しかし、リピート遺伝子は減少しやすい性質を持っているため、細胞がリボゾームRNA遺伝子のコピー数をどのように一定に保っているのかは長い間謎だった。
本研究グループは、Sir2タンパク質の量がリボゾームRNA遺伝子のコピー数に応答して変化する点に着目した。通常、Sir2はリボゾームRNA遺伝子のリピート内の増幅機構を抑えてリピートを一定に保っているが、RNA遺伝子のコピー数が減少すると、SIR2遺伝子の発現が抑制されるという。
この発現調節機構を詳細に解析した結果、UAFという因子がリボゾームRNA遺伝子のコピー数を数える役割を持ち、コピー数の減少に応じてSir2の量を抑える機能を持っていることを発見した。Sir2の量が減少すると、抑えられていたRNA遺伝子の増幅機構が“ON”となってコピー数の回復が促され、コピー数が十分に回復するとSIR2遺伝子の抑制が解除され、再び十分な量のSir2が供給されることでコピー数が一定に保たれるというしくみだ。
リボゾームRNA遺伝子のコピー数は、細胞の老化やがん化によって変動することが知られている。本成果は細胞がリボゾームRNA遺伝子を安定に維持する機構を解明したもので、将来的にこれらの予防と治療に繋がると期待される。
論文情報:【Molecular Cell】RNA polymerase I activators count and adjust ribosomal RNA gene copy number