千葉大学大学院、神奈川工科大学、早稲田大学の共同研究チームは、微生物のDNAの転写を制御するタンパク質にシステインを導入し、本来ヒ素に全く反応しないタンパク質を、ヒ素に応答するタンパク質へ改変することに成功した。安価な分析機器でヒ素を検知できるようになる。
ヒ素は地球上どこにでも存在する毒性の高い元素で、微量でも長期間摂取すると皮膚疾患や神経疾患、がんなどの健康被害を発生するため、環境中のヒ素のモニタリングや検出は重要だ。ヒ素汚染の検出には高価な装置を使った化学分析が一般的だったが、設備費用が高く、分析に専門性が必要だった。
研究チームは、微生物が体内に持つヒ素結合タンパク質が3か所のシステインにヒ素が結合し応答していることに着目。もともとヒ素に無反応なタンパク質でもシステインを3か所導入すれば、ヒ素に応答するようになり、さらにそのタンパク質を大腸菌に導入すれば、従来のヒ素結合タンパク質だけでなくどんなタンパク質も微生物ヒ素センサーにできるのではと考えた。
そこで、システインを含まない大腸菌のコリン応答性転写抑制因子であるBetI中の3か所をシステインに置換した変異体(BetI3cys)を作製。これを大腸菌に導入してヒ素を暴露したところ、ヒ素がないときより30%も高くヒ素に応答したが、銅と亜鉛には無応答だった。これによりヒ素に対する特異性の高いセンサータンパク質が誕生した。
今回の成果により、システインの導入により様々なタンパク質を、環境中のヒ素汚染を感知するヒ素センサーに改変できることが期待される。これにより、高度な機器がない施設でも、安価な分析機器でヒ素の有無を検知できるようになるとしている。
論文情報:【ACS Omega】Imparting As(III) responsiveness to the choline response transcriptional regulator BetI