新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と横浜国立大学は、減速機の構成要素を最適化することで動力伝達効率を飛躍的に高め、従来不可能であった100:1を超える高い減速比の減速機でも、逆駆動が可能となるギヤを世界で初めて開発した。
近年、人とロボットが共存する社会が期待されているが、両者の意図しない接触で危険が生じるおそれがある。それはロボットの関節に使用する減速機が外力に対して柔軟に動く逆駆動性がなく、接触の衝撃を吸収できないため人の安全を十分に確保できないことだ。しかもロボットの中核部品である減速機の研究は数多く、大きな改善の余地はないと考えられていた。
今回、横浜国立大学は減速機の一つである「複合遊星歯車機構」の動力伝達効率を最大化するために歯車の歯数や転移係数などの構成要素を最適化し、動力伝達効率を飛躍的に高めることに成功。従来不可能であった100:1を超える高い減速比の減速機でも、柔軟に逆駆動できるギヤ(バイラテラル・ドライブ・ギヤ)を開発した。試作したギヤは、従来の減速機よりも逆駆動動力伝達効率は約30%向上し、増速起動トルク(逆駆動トルク)は約1/300に低減した。
この機構は逆駆動に特徴があり、ロボットの関節が外力に対して柔軟に動ける。また、逆駆動による制動時の熱を電気エネルギーとして回収すること(エネルギー回生)を効率化し、モーター情報による負荷トルクの推定を可能とした。小型軽量化・低コスト化・省エネ化を同時に実現できるため、今後、協働ロボット、アシストロボット、移動ロボットなどの関節部材や、電気自動車(EV)、電動自転車の変速機などへの展開が期待できるとしている。