東北大学と三井金属鉱業株式会社は共同研究により、低温焼結性を持つ銅ナノ粒子を極めて低環境負荷の条件で合成するプロセスを新たに開発した。
電子回路や絶縁膜等を印刷技術により作製する「プリンテッドエレクトロニクス」や「次世代パワーデバイス(パワー半導体)」などに用いる接合材料として、銀ナノ粒子を使用する低温焼結型銀ナノペーストの研究開発が進んでいる。近年、銀より安価な銅ナノ粒子による研究開発も盛んだが、銅ナノ粒子調製法は生成する銅ナノ粒子の凝集抑制や酸化防止に高分子類を用いるため、銅粒子表面に高温で分解する有機物が残存して低温焼結を阻害していた。
研究では水中・大気下・室温という極めて低環境負荷な条件での水溶性銅錯体の還元処理(水溶性銅錯体室温還元法)により、低温焼結性の銅ナノ粒子の合成に成功した。得られた銅ナノ粒子を加熱焼成した結果、有機成分が低温(140℃程度)で分解して銅ナノ粒子の焼結が開始されることを解明した。
今回開発した銅ナノ粒子をペースト化すると、180℃程度の低温焼成(窒素雰囲気下の無加圧焼成)でポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムやポリイミド(PI)フィルム上に銅粒子間が焼結した良好な厚膜銅配線(膜厚14μm)ができる。これにより、プリンテッドエレクトロニクスによるIoTセンサーの回路形成材料などとして銀ペーストやハンダ代替が期待できるという。
また、銅基板間を銅ペーストで接合する模擬接合構造を用いた金属間接合材料としては、200℃程度の低温焼成(窒素雰囲気下の無加圧焼成)で高いシェア強度(>30 MPa)を示し、次世代パワーデバイス(SiCやGaN)の接合材料として実用化が期待できるとしている。