東邦大学の研究グループは、製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターと共同で、新種の希少放線菌(アクチノプラネス・キロマイシニカス)TPMA0078Tを発見した。この菌株は東京都新宿区の土壌から分離され、強い抗菌作用を示すキロマイシン(kirromycin)を生産することを明らかにした。
放線菌はゲノムDNAのGC(グアニン、シトシン)含量が高いことを特徴とするグラム陽性細菌に属する一分類群。典型的な放線菌は分岐を伴う菌糸の伸長と胞子を形成し、糸状菌に類似した多様な形態を呈する。主に土壌から分離されるが、近年、植物や海洋環境からの分離も多く報告されている。また、放線菌は抗生物質などの生命維持や発育増殖に関与しない多種多様な2次代謝産物を生産する。これまでに発見された微生物由来の抗生物質は1万化合物以上と言われているが、その3分の2は放線菌由来のものだ。
研究グループは、放線菌由来の生物活性物質の探索研究において、東京都新宿区の土壌からオレンジ色のコロニーを形成するTPMA0078Tを分離した。近縁種とのゲノム配列の比較解析、形態や培養性状、化学分類性状などを詳細に分析した結果、菌株は希少放線菌であるアクチノプラネス属(Actinoplanes)の新種であることを明らかにした。
また、この菌株は細菌のタンパク質の合成を阻害する抗生物質キロマイシンを生産することを確認し、さらにゲノム解析情報からはキロマイシンの他にも複数の抗生物質を生産し得る生合成遺伝子を持つことが分かった。
今回の研究成果は、放線菌の多様性に関する理解を深めるだけでなく、医薬品シード化合物の開発に応用可能な遺伝情報を含めた生物資源の確保に寄与することが期待されるとしている。
論文情報:【The Journal of Antibiotics】Actinoplanes kirromycinicus sp. nov., isolated from soil