2024年9月11日、株式会社UACJと東京工業大学の研究グループは、「縦型高速双ロール鋳造実験機」を完成し、UACJのR&Dセンター内に設置したことを発表した。アルミニウムの量産化を目指した鋳造技術としては、世界で初めての取り組みとなる。本事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成によるもの。
アルミニウムは再生地金を使用することで、新地金を使用するよりも製造時のCO2排出量を97%削減できるため、循環型経済推進への取り組みが近年特に期待されている。しかし、これまで、アルミ溶湯(ようとう、溶解し液体状にしたもの)に鉄(Fe)やシリコン(Si)などの不純物が混入すると、材料の特性が低下してしまうため、アルミニウム展伸材の原料にリサイクル材を使用すること(アップグレードリサイクル)には技術的な課題が多く困難とされてきた。
今回開発した鋳造実験機は従来の横型双ロール鋳造機と比べ、溶湯とロールの接触面が長いことや、熱伝導性が高いロールを採用したことなどにより、アルミ溶湯の冷却速度と鋳造速度はほぼ数十倍に向上した。これにより、急速な凝固プロセスが構築され、アルミ合金の溶湯に混入した不純物による晶出物(アルミとは異なる化合物)の微細化および分散化が可能になり、より多くのアルミリサイクル材を用いた展伸材の製造が実現する。
今後は、縦型高速双ロール鋳造実験機での高品質なアルミリサイクル材の量産化を目指し、量産化に必要な技術課題の解決を進める。2030年以降に量産化を実現し、2050年には業界全体で年間1,800万トン規模のCO2排出量削減を目指すとしている。