大阪公立大学大学院獣医学研究科の山﨑伸二教授らの研究グループが、エジプトで生産された水牛やヤギの生乳やチーズなど乳製品から病原性を持つ大腸菌を分離して性状を調べたところ、2021年に富山県で1,900人近い食中毒を引き起こした大腸菌と一致することが分かった。

 大阪公立大学によると、この大腸菌は菌内で作られたたんぱく質を宿主の細胞内に打ち込むことで病原性を発揮する3型分泌装置と呼ばれる病原因子を持ち、多くの薬剤に耐性を示す多剤耐性菌が存在している。このため、この大腸菌が新規の病原性大腸菌となる可能性がある。研究グループは今後、さらに性状の解明を進めることで有効な治療法や予防法の確立が可能になると期待している。

 エジプトでは過熱した牛乳や牛乳から生産された乳製品より非加熱の生乳や生乳から作った乳製品が好まれるが、農家や生産者の食の安全に関する意識が十分でなく、乳製品が原因の食中毒が頻繁に発生している。菌の性状解明は現地の食中毒予防にも重要な意味がある。

 富山県富山市では2021年6月、学校給食の牛乳が原因となった食中毒が発生、市内の小中学生、保育園児ら1,896人に腹痛や下痢、嘔吐などの症状が出た。

論文情報:【International Dairy Journal】Prevalence of potentially pathogenic and antimicrobial-resistantEscherichia coli in raw milk and dairy products in Egypt

大学ジャーナルオンライン編集部

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