筑波大学の柳沢正史教授らの研究グループは、スマートフォンアプリのデータによる大規模調査により、タンパク質の摂取量が多い人は総睡眠時間が長いこと、また、食物繊維を多く摂取している人は総睡眠時間が長く、寝付き時間と中途覚醒が短いことなどを明らかにした。
これまでの報告では、特定の栄養素が睡眠の持続時間や質に影響を与えるとされている。しかし、主要栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)の相互依存性※を考慮した研究は限られており、それらのバランスがどのように睡眠に影響するかは十分に解明されていない。
研究では、株式会社 asken (あすけん)の食事管理アプリ「あすけん」および株式会社ポケモンの睡眠ゲームアプリ「Pokémon Sleep」を同時に利用している4,825名のデータについて、7〜136日間の睡眠変数と主要栄養素を分析した(平均年齢36.7歳、女性81.6%)。
それにより以下の内容が判明した。①総エネルギーが高いほど総睡眠時間が短く、中途覚醒が長い。②タンパク質摂取量の多い人の方が、総睡眠時間が長い。③一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の摂取が多い人は睡眠時間が短い。④多価不飽和脂肪酸の摂取が多い人は睡眠潜時(寝付き時間)と中途覚醒が短くなるが、一価不飽和脂肪酸の摂取が多いと睡眠潜時と中途覚醒が長くなる。⑤食物繊維を多く摂取している人は、総睡眠時間が長く、睡眠潜時と中途覚醒が短くなる。⑥ナトリウム摂取が多く、カリウム摂取が少ない人は総睡眠時間が短く睡眠潜時と中途覚醒が長くなる。
今回の研究により、タンパク質、多価不飽和脂肪酸、食物繊維が豊富な食事習慣により、睡眠が改善する可能性が示唆された。今後は、実際の食事介入などによる効果検証を行い、より詳細な因果関係等を究明する予定としている。
※ 1日に摂取する食事のうち三大栄養素のいずれかの割合を増やすと、残りの栄養素の割合が相対的に減少すること。