東京大学大学院の竹内昌治教授、早稲田大学の森本雄矢准教授らの研究グループは、世界最大となる18センチメートルの「多関節バイオハイブリッドハンド」を開発。工学・医療分野など幅広い応用が期待される。

 従来の生体組織と人工素材を融合させたバイオハイブリッドロボットは、主に1センチメートル程度の単純な構造体で1つの関節やヒンジを駆動するだけだった。大きな構造を動かすには、高出力・長収縮距離の筋駆動アクチュエータが必要だが、筋肉を太くすると栄養供給が不十分となり、中心部で細胞が壊死する問題があった。

 研究グループは今回、ヒト由来の培養筋組織を用いた「多筋組織アクチュエータ(MuMuTA)」を開発。複数の細いヒト培養筋組織を束ねる構造のため、組織一本一本の栄養供給を確保して壊死を防ぎ、細い組織により筋線維の配向性が向上可能となった。これにより高収縮力(約8mN)と高収縮率(約13%)を実現。また、そのヒト骨格筋組織は10分連続駆動すると疲労し、1時間休んだら回復するといった疲労・回復特性も再現できた。

 さらに、ロボット骨格と組み合わせて18センチメートルのバイオハイブリッドハンドを実現した。指には多関節リンク機構を備え、MuMuTAの直線的な収縮運動をワイヤ駆動機構によって関節の回転動作に変換し、多関節の指を動かすことに成功。また、5つの指を独立制御し、多様な動作が可能となった。ピペットチップのような小物体をつかみ動かす複雑な操作にも成功した。

 この技術は、生体組織を直接用いた大型のバイオハイブリッドロボットへの応用や、筋収縮で動く義手の開発、薬物試験モデルなど、工学分野から医療分野までの幅広い新たな応用が期待されるとしている。

論文情報:【Science Robotics】Biohybrid hand actuated by multiple human muscle tissues

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