2025年2月14日、東京医科大学(東京都新宿区)と沖縄県立中部病院(沖縄県うるま市)は包括連携協定を締結した。沖縄県立中部病院が実践する質の高い診療参加型臨床実習と国際基準の医学教育の実現、また、離島医療を担う医師育成を通じて長年育んできたプライマリケアを基本とする学習機会創出など、人材育成体制の強化を目指す。

 沖縄県立中部病院は、米国統治下の1967年にハワイ大学と提携し、国内では先駆けとなるオンザジョブトレーニング(On the Job Training:診療現場重視)の臨床研修プログラムを導入。様々な診療科で研修を行い、全ての医師に求められる能力を養成する研修プログラムは、2004年から日本で導入された医師の卒後臨床研修制度のモデルとなった。研修医を前面に出し、医療面接・身体診察の所見を基にして指導医と研修医間で徹底的に議論しながら(Peer Review)診断および治療方針を決定するという教育体制により、研修医は高い臨床推論能力と総合臨床医としての経験値を積むことができる。

 東京医科大学では、高度な先進医療を担う附属病院に加え、地域医療機関や在宅診療機関を教育リソースとして活用することで「臨床実習を重視した全人的医学教育カリキュラム」の構築を目指している。沖縄県立中部病院と連携し、その教育体制を導入することで、「総合的な診療能力の基盤の上に高い専門性を有する医師」の育成という、さらにハイレベルな人材育成を推進させることを目的に、協定の締結に至った。

 東京医科大学の宮澤啓介学長は、協定にあたり「沖縄県立中部病院は、米国式医学教育を全国に先駆けて導入し、医療面接と身体診察(H&P) を重視した教育方針が、診療科の枠を越えて病院全体に深く浸透しているのが特徴です。カンファランスの冒頭では、あえて検査データや画像を提示せず、H&Pだけでどこまで確定診断に迫ることができるかを論理的に徹底して議論します。これにより、研修医たちは高い診断能力を修得しています。私自身、このカンファランスに参加し、本学の学生たちに提供したい教育がここにあると深い感銘を受けました」とコメントしている。

 今回の協定を通じて、沖縄県立中部病院は、東京医科大学の研究・教育リソースの最大活用により、沖縄県地域医療・離島医療で集積したビッグ・データを用いた質の高い臨床研究の国際社会への発信、臨床研究を基にした先進的医療の地域社会への還元、東京医科大学での学位(博士号)取得によるキャリア形成など、臨床研究の更なる充実及び職員のキャリア支援が期待できるとしている。

参考:【東京医科大学】東京医科大学と沖縄県立中部病院が包括連携協定を締結 ~臨床研修の名門・沖縄県立中部病院と医科大学が初の包括連携協定~

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