金沢星稜大学経済学部の中尾公一ゼミナールは「物流企業が災害時に果たす役割」をテーマに、「令和6年度能登半島地震」の災害物流の改善に向けた調査・報告を行った。
この調査・報告は、金沢星稜大学の連携先である石川県中小企業家同友会の2024年度課題解決型共創インターンシップ事業の一環で、会員企業である野々市運輸機工株式会社と、同社から紹介された一般社団法人石川県トラック協会、同協会の会員企業の北陸貨物運輸株式会社、株式会社東崎倉庫運輸などの協力を得て実施された。
中尾ゼミでは、2024年6月28日に、石川県トラック協会の岡村諭適正化事業課長、北陸貨物運輸の山田実紀秀専務(当時)、野々市運輸機工の吉田章社長を講師に招き、能登半島地震の際の支援物資の集積場となった産業展示館の様子について話を聞いた。7月には手作業とフォークリフトの作業効率の違いを体験し、学生の発案で、①物資の送り手班、②道路班、③避難所班、④被災者班、⑤過去災害班(2016年4月の年熊本地震との比較)に分かれ、協力企業からの助言や提案を受けながら聞取調査やフィールドワークでの調査項目の改善を図った。
10月からは、北陸貨物運輸と丸福物流から「令和6年度能登半島地震」の際の支援物資の集積場となった産業展示館から被災地までの道路状況やトラックドライバーを取り巻く環境や課題についての説明を受けた。また、オンラインで被災自治体の職員、被災者となった大学OBから発災時の状況や対応、困りごとを聞いたほか、全日本トラック協会北信越ブロック大会を訪問し、石川県トラック協会の会員の発災時の体験や道路状況、支援活動などについて教わった。
11月にフィールドワークとして「令和6年度能登半島地震」の被災地となった穴水町や珠洲市を日帰り訪問し、発災から10ヶ月後の道路状況や建物の損壊状況、そして金沢市から穴水町、珠洲市までの距離や所要時間も確認した。珠洲市で被災した飲食店が合同で運営する「すずなり食堂」で発災から3月下旬に至るまでの避難所運営の状況などを聞いた。その後、合同会社CとHが運営する「OKNO to Bridge奥能登ブリッジ」と震災により損壊した旧施設などを視察し、話を聞いた。
これらの活動を通じて集約した情報は、12月27日に、石川県トラック協会及び石川県中小企業家同友会の関係者に対し、①物資の送り手班、②道路班、③避難所班、④被災者班、⑤過去災害班5班が、それぞれ調査結果と災害物流改善のための提案を行った。 発表を聞いた関係者からは「提案内容の合理性だけではなく、十分に情報が得られなかった被災地の現場でしか入手できない情報に基づき、思いもよらない提案を頂いた」とのコメントをもらった。
今回の調査・報告を行ったゼミ生からは「発災時に実際に物資の輸送に関わっていた方々のお話では当時の大変さが伝わってきたと同時に災害物流にはまだまだ課題も多いことを学びました。学生の視点から災害物流の改善策を考えるということは時間と労力がかかる大変な作業でしたが、班員と何度も話し合い発表資料をまとめる時間はとても有意義な時間だったと思います」「珠洲市へのフィールドワークでは、実際に被災地に足を運ぶことで、地震から10ヶ月が経過しても復興が進んでいない現状や、インターネットの調査だけでは得られなかった課題を肌で感じることができました。私たちだからこそできる視点から課題解決に向けた具体的な提案力を養うことができたと感じています」との感想が聞かれた。