京都府立医科大学と理化学研究所の共同研究で、咳や嚥下をトリガーする感覚細胞が新たに発見された。
喉は、誤嚥した物質を排出する咳と、食べ物を胃に送り込む嚥下の2つの気道防御反射の起点となっている。しかし、咳や嚥下の生理学的機序には、未解明な部分が多く残されている。
今回、本研究グループが以前に舌で発見した「チャネルシナプス」という特殊な機構を有する感覚細胞が、マウスを用いた研究により、喉の上皮にも希少に存在することがわかった。これらの感覚細胞は、喉頭ではタフト細胞(露出したブラシのような微絨毛で化学物質を感知する細胞)、咽頭では2型味細胞(甘味・苦味・うま味・塩味を受容する細胞)として存在することを突き止めた。さらに、これらは無数の侵害化学物質に対する受容体T2Rを発現しており、侵害化学物質に応答すると、喉頭タフト細胞は咳反射、咽頭2型味細胞は嚥下反射を誘発することを見出した。
これらの結果から、日常的に接触する多様な化学物質(苦みのある毒素を含む植物抽出物、タバコの煙、空気汚染物質、病原体関連物質など)に対し、咳や嚥下の気道防御反射を引き起こす新たな感覚センサーの存在と応答機序が明らかとなった。
本研究成果はさまざまな展開が考えられる。マウス実験により、喉頭タフト細胞は、アレルギー性咳過敏症にも関与することがわかった。長期間咳が止まらない慢性咳嗽は原因不明または難治性の症例が多いが、今後、ヒトにおいてタフト細胞と慢性咳嗽の関連が明らかになれば、慢性咳嗽の治療や創薬に道筋を示すことが期待される。
また、本研究が明らかにした、苦味物質が嚥下を促進する機序は、一般に「喉ごし」と表現される、ビールの飲み下しやすさの感覚の一端を説明する可能性があるという。咳や嚥下を担う感覚センサーは、喉ごしのセンサーである可能性もあるとしている。
論文情報:【Cell】Channel synapse mediates neurotransmission of airway protective chemoreflexes