短大の苦境が叫ばれる時代、全国で20校以上が学生募集を停止し、女子大学も共学化が進んでいる。それでも毎年定員を満たし、志願者数も伸ばし続けている短大が東京都港区にある戸板女子短期大学だ。
「短大で、女子大だからこそできる教育がある」。
その革新的な挑戦を、広報部部長の堀江さんに伺った。
学生広報スタッフ「チームといたん」年間表彰式の様子
体験×専門性で、社会で生き抜く力を育てる
「戸板の学びの核は『体験×専門性』です」と、堀江さんは語る。
戸板女子短期大学の2024年度定員充足率は104.5%で、関東甲信越エリアの短大で志願者数1位を記録した。その原動力は、PBL(課題解決型学習)に対する本気の取り組みにある。
なかでも注目したいのが「TOITA PBL PROJECT」。企業や自治体と連携し、学生たちにリアルなビジネスに飛び込む機会を与えている。
たとえば、アパレルブランドを展開する「once elf」とのプロジェクト。学生自身がネーミングやロゴを考案し、韓国・東大門市場まで買い付けに行く。値決めをし、商品として実際に販売までしている。
夜中の12時から朝6時までビルを何棟も歩き回り、交渉し、目利きを重ねる——まさに「生きたマーケティング」。2泊3日の過酷な旅を終えた彼女たちの顔には、プロとしての自信と誇りが宿っていたという。
堀江さんが着用しているパーカーは、PBLで作られたブランド「#Y010」のもの。
2025年度はプロジェクト数を前年度の3倍となる30件に拡大。
「変なホテルを“変に戻す”」「沖縄・本部町に美ら海水族館以外の新名物を作る」など、学生のアイデアが世に放たれる社会直結型のリアル体験が待っている。
さらに、前期・後期ともに授業の一部をオンデマンド化し、夏休み・春休みを早める大胆な制度改革も行い、体験型学習を支える「時間」までデザインしている。
「PBLを通して学生は、人に伝えたくなるエピソードが増えます。それを周囲に楽しく語るうちに、自然と表現力などが身につくのです。失敗やミスを恐れなくてもいい安心感のある環境で挑戦できるので、卒業後も積極的に考えたり動いたりできる人材に成長します。
実際に4年制大学に通う就活生と同じフィールドに立っても、戸板の学生は次々と採用を勝ち取っていました。」
戸板fes(学園祭)で行ったアパレル起業プロジェクトのファッションショー。自分のブランドが大歓声を浴びる経験は自信につながる。
好きをキャリアに。戸板が描く「夢の最短ルート」
もうひとつの強みは、”好き”を未来へつなぐ仕掛けだ。
K-POPやKビューティーに興味がある学生には、韓国屈指の人気校である誠信女子大学への編入制度を用意している。
TOPIK3級を取得すれば3年次から編入でき、卒業後は韓国での就労も可能だ。
また、大人気の韓国コスメブランドrom&ndと連携し、韓国本社の研修ツアーやコスメ開発体験も実施。日本唯一の連携校として、高校生の憧れを現実に変えている。
「戸板は『韓国を学ぶ』だけでなく、『韓国で活躍する力』を育てます。韓国語だけに焦点を当てずに、むしろ『韓国コスメに囲まれて働きたい』『K-POPアイドルと会える現場で活躍したい』など、好きな韓国を入り口にして未来を考えたほうが良い。卒業後の姿と自分の大好きなものを結びつけられるような場所になろうと考えました。」
自分の好きなものを起点に、将来をデザインする。ここに、戸板ならではのキャリア支援がある。
学内にはrom&ndのお店を思わせる装飾も。このフロアではコスメの販売が行われることもある。
ニーズに応え、未来に合わせて変わり続ける
2025年度には新たに、服飾芸術科に「パフォーマンス&アートモデル」が誕生。
ダンサーやタレント志望だけでなく、舞台裏を支えるステージマネージメント、イベント企画・運営といった幅広いフィールドで活躍できる力を育てている。
さらに、芸能活動や体調不良、留学希望など、柔軟に対応できる「長期履修制度」も導入。2年間分の学費で、3年間じっくり学べる仕組みだ。
また、時代のニーズに合わせ、食物栄養科を2026年度で募集停止へ。
商品開発やカフェ・レストランのプロデュースを学びたい学生の声に応え、他学科の「フードビジネスモデル」へ組み込む形で教育を進化させた。募集停止というとマイナスイメージを持つかもしれないが、あくまでも前向きな改革だ。
「これまでも多く学生の開発した商品を世に出してきた戸板だからこそ、企業のサポートを受け、さらに一歩踏み込んだ体験に挑戦させられます。変化を恐れず、学生の未来に真摯に向き合う——それが戸板の姿勢です。」
「海外」「沖縄」現地体験、「食品メーカー」との商品開発など、これまで以上に学外へ飛び出すプロジェクトは聞いているだけでワクワクする。この環境下に飛び込める学生が羨ましくもある。
足を踏み入れたら変わる学校
「戸板には、「高校時代にうまくいかなかった」学生も多くいます。」と、堀江さん。
しかし、リアルな体験を重ねるうちに、自信を持ち、大きく成長していくそうだ。
それを象徴するのが、学生広報スタッフ「チームといたん」。年間40回にも及ぶオープンキャンパスを全て企画・運営している、戸板を代表するブランドチームだ。最初はプレゼンが苦手だった学生も、半年後には堂々と人前に立っている。
「高校の先生が『といたん』になった教え子を見て、あまりの成長ぶりに感動して涙したほどです。」
また、「戸板女子短期大学は足を踏み入れたら変わる学校」だと堀江さんは自信を見せる。
「もちろん、ペースは人それぞれです。誰もが『自分の変化」を楽しめる場所が、戸板にはあります。」
戸板女子短期大学では、堀江さんをはじめとする広報部が中心となって学生たちの学びや体験を支えている。
女子大×短大だからできる、密度とスピード
冒頭で述べたとおり、短大や女子大の多くは苦境に立たされている。しかし戸板女子短期大学はむしろメリットだと考えている。
「短大だから、2年間を全力で駆け抜けられるし、女子大だからこそ、異性の目を気にせず感情を爆発させることができます。我々にはその感情を本気で受け止める責任があります。」
教職員も学生も2年で人生を変える覚悟を胸に、大学生活に向き合っている
「失敗も、成功も、すべてが自分の成長に直結する環境が、ここにはあります。
本気で学び、本気で挑戦する2年間が、あなたを次のステージへ押し上げるのです。」
最後に堀江さんは、自信を持って言い切った。
「大学が変わる。学生が変わる。社会が変わる。未来を本気で描くなら、今、戸板女子短期大学へ。」