水素を検出する手法のひとつに、基板上に分散されたパラジウムナノ粒子を使ったセンサがある。水素を吸収すると体積膨張するパラジウムの性質を利用したもので、分散していたパラジウムナノ粒子が水素ガスに触れると体積膨張し、互いに接触した際に導通する(電気抵抗が低下する)ことを検出原理とする。このセンサでは、わずかな体積変化でナノ粒子が接触するように、粒子の間隔をできるだけ小さくすることが、高感度化の鍵だ。しかし、ナノ粒子の間隔を制御することはこれまで困難だった。
大阪大学大学院の研究グループは今回、「音」を用いた独自の粒子間隔評価法を開発し、これをパラジウムナノ粒子の作成に適用することで、従来の12倍も大きな水素検出能力(電気抵抗変化)を示すパラジウムナノ粒子の作成に成功した。
研究グループが注目したのは、パラジウムの成膜初期に基板上に形成されるナノ粒子だ。金属の成膜では、最初にナノ粒子が形成され、それが成長して互いに接触することで連続膜が形成される。連続膜形成の直前で成膜を中断すれば、ナノ粒子間の距離を極めて小さくすることができる。
これまで、成膜中の粒子間の距離を評価することは困難だったが、圧電体の共振(音)を利用したユニークな手法で成功させた。基盤の背面で圧電体を振動させると、周囲に電場が発生し、圧電体の振動エネルギーを消費してパラジウムに電流が生じる。パラジウムナノ粒子が接触する瞬間、エネルギー消費量が最大となるので、結果として圧電体の振動の減衰が最大となる。すなわち、圧電体の鳴り響く様子をモニタリングしていると、ナノ粒子同士が接触するとき、急に鳴り響かなくなるのだ。
本手法がもたらす水素検出能力に優れたパラジウムナノ粒子は、低濃度の水素も検出可能な高感度水素センサへの応用が期待される。