信州大学と東京大学の研究グループは、悪性黒色腫の患者を対象に、安全性と有効性の評価を目的とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始する。これまで、抗がん免疫を強力に引き起こす機能を付加した第三世代のがん治療用ヘルペスウイルスの臨床開発を進めていた。
ウイルス療法はがん細胞に感染させたウイルスの増殖よって直接がん細胞を破壊する手法で、革新的な治療法とされる。がん細胞だけでよく増えて正常細胞では全く増えないように、遺伝子工学技術を用いて設計されたウイルスを用いる。
東京大学では、第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス(G47Δ)の臨床応用を2009年より進めている。このウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスのウイルス)の3つのウイルス遺伝子を人工的に改変して開発。膠芽腫(悪性脳腫瘍の一種)を対象に昨年終了した医師主導治験(第Ⅱ相試験)で高い治療効果を確認した。
今回使用される T-hIL12 は世界初の抗がん免疫刺激型第三世代がん治療用ヘルペスウイルス。G47Δの基本骨格に免疫を強力に刺激する因子であるインターロイキン12(IL-12)の遺伝子を組み込み、抗がん免疫を強力に引き起こす機能を付加したもの。研究グループは、G47Δの実用化を見据え、G47Δに多様な機能を付加した次世代の抗がんウイルス製品の開発を始めており、その臨床応用の第一弾として T-hIL12 の治験が開始される。
今回の治験は、1つの治験届で悪性黒色腫に対する T-hIL12 単独の安全性(第Ⅰ相)に加え、有効性(第Ⅱ相)まで検討できる。G47Δに続く国産の遺伝子組換え抗がんウイルス製品として、また多様な機能を付加した次世代の抗がんウイルス製品の第一弾として、可及的早期の製造販売承認を目指すという。
参考:【東京大学医科学研究所】悪性黒色腫に対する最新ウイルス療法の医師主導治験を開始 ~世界初の抗がん免疫刺激型第三世代がん治療用ヘルペスウイルス~(PDF)