名古屋大学大学院情報学研究科の井関紗代博士後期課程大学院生と北神慎司准教授は、「コントロール欲求の高い人は、低い人に比べ、カスタマイズ商品に高額を支払ってもよいと考える」ことを明らかにした。コントロール欲求の個人差が、カスタマイズ商品に対する支払意思額※に影響を及ぼすことを明らかにしたのは初めて。
近年、カスタマイズ商品市場は急速に拡大している。しかし、どのような人がカスタマイズ商品を好むのかという問いに対する答えは、これまで十分に明らかにされてこなかった。
そこで、北神准教授らは、パーツ、色や素材などについて選択を繰り返すカスタマイズ商品は、物や状況などを自分の思うようにコントロールできているという感覚”コントロール感”が得られやすい商品であるという点に着目。さらに、これまでの心理学の研究で明らかになっている「人、物や状況などを自分の思い通りにコントロールすることで、自分の望むような結果を導きたいというコントロール欲求を生まれながらに持っており、その欲求の強さに個人差がある」という知見をふまえ、コントロール欲求の個人差がカスタマイズ商品に対する支払意思額に影響を及ぼすのか検証した。
その結果、コントロール欲求の高い人は、低い人に比べ、カスタマイズ商品に支払ってもよい金額が高くなることが示された。加えて、その金額は、カスタマイズ商品に対するコントロール感が促進されればされるほど高くなることも確認された。一方、コントロール欲求の低い人は、むしろ、カスタマイズ商品よりも通常の商品に対して支払ってもよい金額が高くなることも明らかになった。
これらの研究結果から、マーケティングにおいて、カスタマイズ商品はコントロール欲求の高い消費者に訴求することが効果的で、コントロール欲求の低い消費者のニーズは満たさない可能性があることが示され、急速に拡大しているカスタマイズ商品市場でのマーケティング戦略において、コントロール欲求の個人差によるセグメンテーション(市場細分化)の重要性を示唆した。
※支払意思額とは、「この商品を手に入れるために、あなたはいくら払いますか。」という質問に対し、金額を回答してもらうことで測定する。支払意思額が高いということは、その商品の価値を高く見積もっているということであり、実際に購入する可能性も高いことを示唆している。