巨大地震や津波、火山災害、増え続ける異常気象による風水害。「災害大国」日本で、災害を生き延びるために、どのような力が必要なのでしょうか。東北大学加齢医学研究所の杉浦元亮(すぎうらもとあき)准教授らは、東日本大震災の被災者へのアンケート調査から、災害を生き抜くために有利な個人の性格・考え方・習慣を特定し、8つの「生きる力」にまとめました。
宮城県内の東日本大震災の被災者1,412人を対象に行われたアンケート調査から特定された「災害時の8つの『生きる力』」は以下の通り。人をまとめる力(リーダーシップ)、問題に対応する力(問題解決)、人を思いやる力(愛他性)、信念を貫く力(頑固さ)、きちんと生活する力(エチケット)、気持ちを整える力(感情制御)、人生を意味付ける力(自己超越)、生活を充実させる力(能動的健康)です。これらの力が、津波避難時や避難所生活での問題の解決、健康状態などの危機管理・困難克服の経験と統計的に有意に相関していました。
この研究は、災害時の生きる力を、災害科学、脳科学、心理学、認知科学、情報学の観点から学際的に解明した初めての報告になります。災害を生き延びるために、平時から備えておくべき、また育成すべき「生きる力」が明らかになったことで、今後の防災教育の質が大きく変革することが期待されています。
杉浦准教授らは、今後はそれぞれの力について、どのような状況・文脈で発揮されるのか、どのような認知・神経基盤によって実現されるのか、どのようにしてその力を育むことができるのかを詳細に解明してゆくとしています。
なお、この研究は、国際的な学術誌「PLOS ONE」に掲載されました。