東北大学大学院生命科学研究科のチームの研究により、地表を横に伸びる茎(ほふく茎)や地下で伸びる茎(地下茎)は、葉身をもたない構造に特殊化した葉をつけることで、土の中でも旺盛に伸び進めるための適応をしていることがわかった。
ドクダミ、スギナ、イネ科雑草などのしぶとい雑草の多くは、横に伸びる茎(ほふく茎)と上に伸びる茎の両方をもつ。茎を横に延ばすことで、成育域を大幅に拡大することができると同時に、土の中を成長すれば(地下茎)、寒さや乾燥などの悪環境を地下でやり過ごすことができる。つまり、横に伸びる茎は、植物が旺盛に増殖するうえできわめてすぐれた成長様式であるといえるが、その成長様式を成り立たせる仕組みはこれまであまり研究されていなかった。
本研究チームは今回、地下茎をもつイネの野生種、Oryza longistaminata(オリザロンギスタミナータ)の解析から、地下茎につく葉は、葉身をもたず、短い葉鞘だけからなることを見出した。また、これには、葉身の成長を抑え、葉鞘の成長を促進する働きをもつことがわかっているBLADE ONPETIOLE(BOP)遺伝子が関わっており、Oryza longistaminataの地下茎ではBOP遺伝子が強く働いているために葉身が成長しないこともわかった。さらに、ドクダミとシバにおいても、BOP作用の調節による地下茎やほふく茎の葉の特殊化は共通していた。
一方、葉身が成長すると、地下茎の先端が十分な強度を発揮できず、地下を伸び進めないこともあわせてわかった。つまり、横に伸びる茎をもつ植物は、地下茎を地中で成長させるために、BOPを使って葉身をもたない小さな葉を形成するという戦略を共通してとっていることが明らかとなった。
本研究成果は、作物生産や雑草防除への寄与も期待されるとしている。