九州大学病院別府病院の三森功士教授らは、大腸がんが多様な遺伝子変異を持つ不均一な細胞集団からなること、がん細胞の生存とは関係しない遺伝子変異の蓄積による「中立進化」で腫瘍内不均一性が生じることを明らかにしました。 この研究はJST課題達成型基礎研究の一環として東京大学医科学研究所の新井田厚司助教、宮野悟教授、大阪大学大学院医学系研究科の森正樹教授らとの共同グループによって進められ、研究成果はHPCI 戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」の支援により得られたものです。

 がんの進化や不均一性を解明する手法として、一つのがんから異なる部位を複数採取し、解析するものがあります。がんが多様なクローンから構成されていれば①複数部位で異なる遺伝子変異を検出することができ、②複数部位に共通する異常は進化の前半に、共通しない異常は後半に起こると推測できます。本研究グループでは大規模な遺伝子変異解析を実施。次世代シークエンサー等を用いて複数タイプの遺伝子変異の不均一性を評価した結果、一塩基変異、コピー数異常といったさまざまな変異について高い腫瘍内不均一性が見られました。

 また進化の前半にみられる変異として加齢に関連する異常が認められ、がん化につながる正常細胞の遺伝子変異と加齢との関係性が考えられます。この関連をアメリカThe Cancer Genome Atlasによる大腸がん約260例の大規模遺伝子変異データをヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューターで再解析することで実証。さらに東京大学医科学研究所の協力により、スーパーコンピューター「京」を利用したがん進化のシミュレーションにより、高い腫瘍内不均一性が生まれる仕組みが解明されました。

 今後スーパーコンピューターによるシミュレーションが進むことで、がんの多様化を阻害する治療方法や、不均一性を持つ細胞集団により効果的な治療戦略が生み出されることが期待されます。

大学ジャーナルオンライン編集部

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