東北大学大学院医学系研究科の新堀哲也准教授らの研究グループは、先天性の骨疾患である橈尺骨癒合症(とうしゃくこつゆごうしょう)と無巨核球性血小板減少症を合併する疾患の新しい原因遺伝子を発見しました。

 無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症は、血球の減少と、前腕の2本の骨の癒合が起こる疾患です。これまで10家系ほどしか例がなく、そのうち2家系で原因遺伝子HOXA11の変異が報告されておりましたが、この遺伝子に変異が確認されない例もあり、別の原因遺伝子の存在が示唆されていました。

 そこで本研究では、HOXA11の変異が確認されなかった患者およびその健康な両親の遺伝子解析を行い、両親には見られず患者本人にのみ発生している遺伝子変化を探しました。その結果、白血病や大腸がん・卵巣がんなどで高発現となるがん原遺伝子であるEVI1のミスセンス変異(タンパクを構成するアミノ酸の一つが別のアミノ酸に置き換わっていること)を確認しました。さらに同疾患の患者2名の遺伝解析を行ったところ、変異がEVI1の特定の領域に集中していたことから、この領域が血球の増殖だけでなく前腕の発生に重要な役割を果たしていることが示唆されました。

 EVI1はがんで多く発現することは既に分かっていましたが、先天的にEVI1のミスセンス変異を持つと血液細胞が減少することが本研究で初めて明らかになりました。この発見によって、今後EVI1高発現のがんの治療法の開発が進むことが期待されます。

 

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