世界では毎年1,000万トンを超えるプラスチックごみが海洋に流入しているが、そのうち海面に浮かぶ量はわずか44万トンにすぎず、残りの大部分の行方は不明だという。最終的には深海に沈み、深海底にプラスチックごみが集積していると考えられているが、深海ごみの実態は明らかになっていない。
日本近海でも、北上する黒潮によって、東アジア・東南アジア諸国から漏出したごみが運ばれることで、深海底には極めて多量のプラスチックごみが集積していることが予想される。特に、巨大なごみだまりの形成場所と見込まれる海域の1つである房総半島沖の「黒潮続流・再循環域」の海底を、今回、国立研究開発法人海洋研究開発機構らのグループが調査に乗り出した。
2019年9月、有人潜水調査船「しんかい6500」を使って房総半島から約500km沖、水深6,000m付近の深海平原を調査した。その結果、同様の水深帯とは桁違いに多いプラスチックごみ、特にポリ袋等の使い捨てプラスチックが見つかった。海溝や海底谷などごみなどが集まりやすいと考えられる窪地と比較してもその量は多く、35年以上前に製造されたほとんど無傷の食品包装までも見つかった。このことは、深海ではプラスチックがほとんど劣化せず、極めて長い時間残り続ける可能性を示唆する。
本調査により、黒潮が運ぶ大量のごみの一部は沈降して日本周辺海域の深海底に堆積すること、そして「黒潮続流・再循環域」の深海底がプラスチックごみの主要な溜まり場の1つになっていることが判明した。四国沖の「黒潮・再循環域」の表層でも、海流が大きく渦を巻いて循環しているため、渦に巻き込まれたプラスチックごみが集積・沈降することで、海底の汚染が広がっている可能性が高いといい、本グループの今後の調査対象となる予定である。