名古屋工業大学、神奈川大学の研究グループは、バレンシア大学と共同で、金属ナトリウム分散体を用いることでフッ素系高分子「PTFE」や、残留性有機汚染物質に関する国際条約(POPs条約)対象物質の「PFOA」など様々な「PFAS」の常温・常圧分解に成功し、フッ素資源となるフッ化ナトリウムへと変換する新技術を開発した。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系高分子は、優れた耐薬品性・低摩擦・耐熱性からフライパンのコーティングや自動車部品、半導体・光ファイバーの絶縁材など幅広く利用されている。しかしその高い耐久性により、高温焼却で大量のエネルギーを必要とする上、腐食性のフッ化水素ガスを発生し、埋め立てても分解されないため、地球環境への悪影響が懸念されている。
研究グループは金属ナトリウム分散体(金属ナトリウムの微粒子がミネラルオイル中に分散した液体)を用いて、フッ素系高分子の分解・脱フッ素化に取り組んだ。その結果、フッ素系高分子のPTFEの常温・常圧で分解し、フッ化ナトリウム(NaF)へと変換することに成功した。さらに、同手法がPFOA(ペルフルオロオクタン酸)などのPFAS(ペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質)の分解・脱フッ素化にも適用可能と判明した。
今回開発した分解・脱フッ素化法は、PTFEや様々なPFASから最大98%のフッ素をフッ化ナトリウムとして高効率に回収でき、焼却時のエネルギー消費や分解時に発生する有毒ガスの発生を大幅に抑制できる。また、回収したフッ化ナトリウムは、フッ素資源として国内で再利用でき、蛍石など輸入原料への依存も減らせる。フッ素資源循環と環境負荷低減の両立に貢献できる技術だとしている。
論文情報:【Nature Communications】Room-temperature defluorination of PTFE and PFAS via sodium dispersion