徳島大学大学院の二川健教授と医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)産官学連携研究センターの坪山(笠岡)宜代客員研究員が科学雑誌「Nature」から寄稿依頼を受けて執筆した、日本の宇宙食開発の現状と展望についての意見論文が同誌に掲載された。有人宇宙開発で必要な食・食料の開発における日本の研究の重要性が浮き彫りになった。

 意見論文では背景として、人口増加・気候変動・農地の減少による食料不足、従来の動物中心のたんぱく源供給体制の限界を指摘。また、月での生活が急速に現実味を増し、宇宙での長期間の食生活に関する研究が求められており、日本は災害多発国として、宇宙食の研究成果を社会に還元し、災害備蓄や高齢者支援など地上での応用に積極的であるという。

 寄稿内容は、宇宙食の現状と展望についての研究成果を中心にまとめたもの。宇宙栄養学の災害支援・高齢者ケア・栄養失調予防への展開(トランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究))、藻類・培養肉・昆虫などの技術の適用によるたんぱく質危機への対応、食料生産・飢餓撲滅・健康維持などの持続可能な開発目標(SDGs)との親和性を、これらの研究の意義として挙げている。

 今後の展開に関し、日本栄養・食糧学会が宇宙食健康認定士制度をスタートさせ、徳島大学大学院医科栄養学研究科では「宇宙栄養学コース」をすでに開講。同コースでは宇宙食健康認定士希望者に必要な講義を提供し、宇宙環境などの特殊環境での健康科学や宇宙食の研究の推進や、人類の安全・安心な生存圏の拡大に資する人材の育成を目指すとしている。今後は「宇宙栄養学」を通して、有人宇宙開発や人類の食に関する諸問題の解決に尽力すると述べている。

論文情報:【Nature】Why space foods aren’t just for space

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