コロナ禍以降の新しい規範とともに生きる私達は、地球規模の課題に即応できず、無惨な戦禍になす術もなく、不透明な時代に直面し続けています。文学研究科の根幹にあるのは、このような状況にこそ必要な、問題の本質を洞察し、新たな展望を切り拓く「想像力/創造力」の涵養です。各専攻では根源的/革新的な「知」を縦軸として培いながら、横断的な授業科目も開設。「知の越境」が促す広い視野の獲得が、縦軸の「知」の探求の意義を再認識し、「教養」の深化を導くヒントとなります。

 

※2023年取材当時の内容・表記です。

社会・政治・思想・文化の広い視座から中国独自の音楽文化に考察を深めていく

及川:私が中央大学に着任したのが2018 年。戸田さんが学部3年次の時に出会って、4年次の卒業課題研究にあたるロングレポートの指導をしたのですが、とても高い熱意を持っていましたね。どのような興味・関心を持って、どのように学んだらこうなるのかと、本当に印象強い存在でしたね。

戸田:政治学、社会学の観点だけでなく、多角的な観点から研究に取り組みたいと考えていた頃に及川先生が着任されました。学問領域を横断して物事を捉える視点は、私が理想としていた研究イメージと重なるものでした。就職した後にもう一度大学院に行こうと思えたのも、先生の存在がかなり大きかったです。

及川:学部生の頃から、共産主義思想や国家の指導者を称える内容を含んだ歌曲「紅歌」について研究していましたよね。

戸田:音楽学や音楽史学から離れた、社会学的な音楽研究として「紅歌」の変遷や定義、人々に与える影響なども含めて考察を進めています。実は初めて興味をもったのは中学生の頃だったんですよ。

及川:それは早い。どんなところに興味をひかれたのですか?

戸田:日本で生きている中では触れないような、文化としての異質な感触ですかね。邦楽や洋楽と受ける印象がまったく違いました。

及川:中国の政治体制や社会状況を振り返ると、歴史の記憶・記録が抹消されてきた事情があります。そんな中でひとつの歌が人々に共通する記憶を呼び起こす、社会の歴史を歌が記憶するという着眼点は興味深いです。一方で文化研究、思想研究、政治研究など色々なアプローチが可能なので、難しい点もありますよね。

戸田:先生から「まずは自分で考えるように」と指導いただいて、ゼロから考える時間が持てたことはありがたかったです。

及川:博士前期課程ならば2年間、経済的負担もありながら研究のための時間を確保された訳ですから。私としては思う存分に、自由に研究に取り組んでもらいたい、という気持ちがまずありました。

戸田:先生は個別に話す時間をとても大切にしてくれて、研究計画や自分の考察を見直す良い機会になっています。先生の熱意にあふれる研究姿勢も、いつも近くで学ばせてもらっています。

大学院生 戸田 有亮さん

所属/文学研究科 中国言語文化専攻 博士前期課程
研究テーマ/現代中国における「紅歌」について
進学動機/学部を卒業して就職した後に、研究への熱意が再燃。及川先生に相談して大学院への進学を決意しました。

教員 及川 淳子 教授

専門分野/現代中国社会、政治社会思想
研究キーワード/現代中国社会、政治社会思想、普遍的価値、市民社会
研究内容/現代中国の社会、特に言論空間と政治社会思想について

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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