その問題とは端的にいうと、産学連携による提案型の講義にせよ、グループディスカッションやディベート、あるいはグループ・ワークといった手法を用いるにせよ、それが単なる手法の問題で終わっている場合が多いということである。すなわち、受講者の立場でいうなら、教員から受講者への一方通行の受動型講義であるにせよ、ALにせよ、単に参加するだけであるなら大差がなくなってしまう。大切なのは受講者がいかに能動的・主体的に講義に参加するかであるはずなのに、手法としてのALばかりが強調されてしまっては意味がないのだ。
筆者自身、社会人基礎力講義を担当して以来、担当ゼミにおいて産学連携型の商品企画講義を継続して行ってきた。例えば2010年度にはサークルKサンクス、そして中日ドラゴンズと世界の山ちゃんに、2013年度には井村屋、2013年度と2015年度には山崎製パンに対してゼミ生が提案した企画がそれぞれ商品化を遂げ、数万個~数十万個単位の販売実績をあげている。また2013年度にはブラザー販売に対して提案した販促用リーフレットも、実際にビックカメラなどの家電量販店で並べられるようになった。商品化まで及んでいないものでいうと他にも、NTTドコモ、シヤチハタ、中日本高速道路、名古屋鉄道に対する提案活動を行っているし、それと並行し、ゼミ生たちはNTTドコモモバイル社会研究所主催「ケータイ社会研究レポートプロジェクト」、中部マーケティング協会主催「大学生のためのマーケティング研究講座」、関西大学主催「ビジネスプラン・コンペティション KUBIC」など様々なビジネスプランコンテストの類で優勝したり受賞を遂げたりしている※。
では、果たしてこのような商品化や受賞があればそれで学びが得られたといえるのだろうか。筆者はそう考えない。筆者は産学連携講義を初めとしたALで大切なのは講義の場自体や商品化、あるいはコンテストでの受賞といった形式的な結果ではなく、受講者自身がどれだけの課題に直面し、それを克服したのかということだと考えている。例えば同じ産学連携講義を行うにしても、受講者が単にグループに参加し黙って座っているだけであれば、何の意味もなさない。ALにまつわる議論ではそのことが看過されてしまっている。
※これらの成果は中京大学総合政策学部坂田隆文ゼミHPで閲覧可能