2015年9月から始まった新学期には、約150名(30ヶ国、アメリカ以外の国籍の留学生比率78%)の学生が、4年間で世界の7都市(サンフランシスコ、ベルリン、ブエノスアイレス、ソウル、バンガロール、イスタンブール、ロンドン)を巡り寮で学び生活する。全ての授業はオンライン型のアクティブ・ラーニングで学び、世界各都市で提携した企業や公的機関のインターンシップによって行われる、エキサイティングなプログラムがサンフランシシスコから始まった。
彼らの一日の様子を見てみよう。午前中に20人未満のセミナー形式のオンライン授業。午後は、事前課題の予習やフィールドリサーチを能動的に実行。その結果は、教授やメンターにフィードバックされ、学生は有益なアドバイスを得ることができる。こんな毎日が各地で繰り広げられるのだ。
Minerva大学は、独自のActive Learning Formと呼ばれる学習プラットフォームを開発しオンラインにも関わらずアクティブ・ラーニングを実現した。一般のINTERNET EDUCATIONとの違いは、学生の学修の主体性に依存していないということだ。この学習プラットフォームでは、
・教師は、講義をしない(教師はファシリテーションと学生のパフォーマンス・チェックに注力し、授業中合計で10分以上話すと警告を受ける)
・オフラインで実施できることは、ほぼ全てカバー
・学生同士のディスカッション、分析、グループワーク、プレゼンテーション等が展開
・全ての授業が記録される
・学生のパフォーマンス・フィードバックは最短で授業後1時間。各学生に対し、学習改善アドバイスを提供
・学生を含め、全員が授業記録をレビューできる
・従来のクラスに比べ、生徒-教師間の関係がより緊密になる
Active Learning Formの動画を実際にご覧いただきたい。
このようにして鍛え上げられた学生は、自ら、企業や公的機関へのインターンシップ・プログラムを売込み、その施設で研究活動を実施する。Minerva大学が開発運用している学習プラットフォームは、論理的思考能力、創造的思考力、実践的なコミュニケーション能力を徹底的に鍛え上げるための強力なサポートツールなのだ。
実際にこの学習プラットフォームの授業状態を拝見したが、想像以上に学生の能動的参加や活気が感じられた。オフラインのリアルでの授業に比較したメリットとしては、各学生がこの授業にどの程度参加しているか教員は常に把握できるシステムがあることだ。グループワークに転じても教員は、各グループの進捗状況・内容がつぶさに把握できる。学生ごとの授業のパフォーマンスが全て記録されているので、フィードバックは事実に基づいて細かく指導が可能である。また、第三者からのアドバイスも記録を基に可能だ。学生の評価もしかりである。
筆者も実際に在学生の李一格(Yige Li)さん(中国出身)の話を聞いた。中学時代から、自身の教育体験をまとめたエッセーを複数出版し、北京第4高校特進コースに通った彼女は、ハーバード大学で行われた模擬国連のベスト・スピーカー賞の受賞を始め、中学・高校時代に数々の組織でのリーダー経験を持つ。彼女のプレゼン能力や話の内容に度肝を抜かれた。
また、同校の日本連絡事務所代表である山本秀樹氏の話によれば、以前日本に来たこともある温柔嘉(Roujia Wen)さんは7歳からプログラミングを始め、中国の情報工学オリッピックで4年連続優勝した実績を持つ。現在は同大学のコンピュータサイエンスとニューロサイエンスを専攻。人工知能分野に強い関心を持ち、今年の夏は大学教授の推薦で米西海岸の最先端の脳科学研究施設でプログラミングをする機会を得た。温さんは、ジョージタウン大学の入学許可が出ていたものの第一期生としてMinerva大学に入学した。まだ実績のない同校ではあったが、この学びの方法は自分を確実に成長させると確信があったそうだ。