そもそも、世界でもトップクラスの意欲と能力のある高校生であった彼女達ではあるが、同大学でのアウトカムは素晴らしいものがあると感じさせた。主体的考え、教養の深さ、行動的な活動量、論理的思考力、多様性理解の深さ、将来に対するビジョン感、プレゼンテーション能力の高さどれをとっても世界トップクラスと言っていいだろう。

 前出の山本氏は、日本の高校生は、合格率が2%と聞くと、それだけであきらめてしまうことが多いと嘆く。実は、世界の有名大学の留学生比率(自国以外からの学生比率)は以外と低く、ハーバード大学、MIT大学、スタンフォード大学で7%~10%程度だ。合格率は5%台だが、留学生の合格率はさらに低くなる。対してMinerva大学の留学生比率は、78%。2015年の合格率は2%と低いが、多くの留学生の受け入れを行っている。アイビー・リーグ(世界屈指の名門私立大学8校)レベルの教育を世界中の高校生に開くという意思があっての数値だ。全く新しい学び方の大学であり、単なる学力だけで入学許可をしているわけではない。日本での募集活動も活性化させており、日本の高校生も臆せずぜひチャレンジをしてほしいと期待のエールを送っている。

【2】Minerva大学の革新は、日本の大学の固定観念を根底から覆す

 Minerva大学が、世界の有能な人材を惹きつけることから何が見えてくるのだろう。旧来型の大学経営や教育の在り方、学び方そのものを変革する同校の新たなチャレンジは、国内の大学が持っている既成概念や固定観念の強さを改め浮き彫りにさせるのだ。

・広大な校地に素晴らしいキャンパスを自前で持ち、施設・設備は最新が良い
・キャンパスは好立地が望ましい。郊外のキャンパスは都心に移転すべき
・大学教員は、可能な限り最高の権威を招聘し、先端研究を推進するべきだ
・大学教員は、研究が主で、教育は研究の合間に行うものだ
・より良い教育とは、大学に通学してくる学生にキャンパス内で教員が直接実施するものだ
・知識伝達型のパッシブラーニングを中心とした講義を毎年同じように行い、学生は予習・復習を行い自ら学ぶものだ。それが大学だ
・INTERNET EDUCATIONはあくまで補助教材程度の役割しかできない
・学生の評価は、年に数回しかできない。個別のフィードバックなど無理
・講義は、大教室で大人数を対象にすることで経営効率を高める
・図書館を立派に設置し、蔵書数を多数抱えることが学生の教育に良い
・インターンシップは希望者だけに提供するのが関の山
・留学生が多国籍に受け入れると対応が大変だ・・・・などなど

 Minerva大学は、こんな日本の大学の当り前を、根底から覆す新鋭の大学事例だ。
 中央教育審議会は、戦後最大の教育改革に向けて舵を切っている。アクティブ・ラーニングの推進や高大接続強化などの方向性を決めた。しかし、国内の大学は、リアルな講義においてでさえ、アクティブ・ラーニング型への転換に苦慮している。大学の教育の変革には相当の時間がかかるであろう。

 一方、Minerva大学は、オンライン上で教養と専門知識を修得させるだけでなく、完全なアクティブ・ラーニングを実現。多様な国籍の学生が寮で生活し、世界各国を巡ってジェネリックスキルと実社会での体験を身に付けているのだ。

 Minerva大学は、最先端であるがまだ世界のスタンダードではない。また、卒業生の評価もこれからだ。しかし、Minerva大学の各国学生の受け入れの拡大は続き、同様な仕組みを取り入れる大学が世界中に生まれる可能性も大きい。この変革は、日本の大学にとって遠くの出来事ではないのである。

 世界そして社会と時代が求める人材ニーズに合致する教育とは何か。アウトカムの高い教育の在り方は何か。先を見据え、スピード感をもって、抜本的な教育そのものの変革を進める意欲と能力がない大学は、世界的な外圧に容赦なく打ちのめされるであろう。

 「大学改革の現状とその行方 第4回」では、様々な外圧を前提とした長期レンジの大学改革の方向性について考えてみたい。

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寺裏 誠司

・株式会社学び 代表取締役社長
・一般社団法人アクティブ・ラーニング協会 理事
・リクルート進学総研 客員研究員
これまで、コンサルティング支援した大学・短大・専門学校は250校以上、支援高校2,500校の実績。講演・セミナー・研修・大学非常勤講師など200件、対象3万人以上の実績を有する。
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