21世紀における社会の変化を考えると、知識基盤社会の本格化、情報化社会の高度化、グローバル化などがあがるだろう。日本の教育は、これら社会の変化を意識し続ける必要もある。
世界の教育動向に注目すると、コンピテンシー(知識だけではなく、スキル、さらに態度を含んだ人間の能力)に基づく教育改革が潮流になっている。社会の変化に対応するためには、これらの諸能力の育成が急務であること、さらに多くの国でこれらの力の育成が課題であるという現状も見えてくる。
これらの能力の育成の目指すところは、「何を知っている」だけではなく「何ができるか」への教育の質的転換であるといえる。我が国も、いわゆるPISAショックを経験し、社会の変化や世界の潮流と軌を一にして、社会を生き抜く資質・能力の育成をめざした教育改革が国家戦略としての重要性を増している。
次期学習指導要領の改訂では、「子供たちに、情報化やグローバル化など急激な社会的変化の中でも、未来の創り手となるために必要な知識や力を確実に備えることのできる学校教育を実現」(答申)していくことを目指している。この実現のためにも、育成すべき資質・能力を明確にするとともに、幼・小・中・高(・大)・社会と続く視点、すなわち一貫して社会との関係を重視するとともに、学校全体、地域全体、社会全体という視点、すなわち社会一体で子供を育てていくことを重視する、といった教育の質的転換を図ることが求められているといえよう。
文部科学省は答申で、「育成すべき資質・能力の三つの柱」として「何を理解しているか、何ができるか(知識・技能)」「理解していること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力・人間性)」を示した。
これらの育成の実現に向けて、「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろんのこと、「どのように学ぶか」という、学びの質や深まりを重視することが必要であるとしている。そして、学習の過程を重視するとともに、学校の授業においても「主体的・対話的で深い学び」が実現できているかについて検証し続けること(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)が求められるとしている。なお、学習指導要領告示では、「アクティブ・ラーニング」という言葉自体はなくなったが、その理念は現在も重視されている。
さらに、これらの考え方に沿って、高大接続、すなわち大学入学者選抜も大きく変貌を遂げようとしているのである。
「主体的・対話的で深い学び」の実現を通して、答えのないような課題について一人一人が自分の考えをもって他者と対話し、考えを比較吟味して統合し、よりよい答えや価値を創り出す力、さらに次の問いを見付け、学び続ける力、健やかで豊かな未来を創る力の育成を目指していく、このことが社会を生き抜く資質・能力につながるといえよう。
東洋大学 食環境学部教授
後藤顕一