ホスピタリティ産業界の中核を担う高度専門人材を養成
日本文化の拠点・京都で、専門学校4校(京都栄養医療専門学校、京都調理師専門学校、京都製菓製パン技術専門学校、キャリエールホテル旅行専門学校)を運営する学校法人大和学園は、独自の「taiwa流職業型実学教育」を大学教育に活かすべく、来年度、「京都専門職大学」の開学を予定しています。実践栄養調理学部に栄養マネジメント学科と和食ビジネス学科の2学科を配し、高度な実践力と、新たな事業を創出する創造力を身につけ、高い職業倫理感を備えた(栄養士)、管理栄養士、調理師の資格を持つ専門職業人の養成を目指します。学長予定者の田中誠二先生に京都専門職大学にかける思いや、その目指すところ、将来構想についてうかがいました。

 

“京都発”、“日本初”の専門職大学開学へむけて

 来年度からスタートする専門職大学制度は、学術研究のアカデミックラインと職業教育のプロフェッショナルラインの両輪で、大学教育の中でしっかりと高度専門人材を養成するというものであり、1931年の創立以来、「人の和の広がりを大きくし、もって人類の福祉増進に寄与する」という建学の精神の下、職業教育を通じてホスピタリティ分野で活躍できる人材を輩出するとともに、地域社会の産業の振興に貢献してきた本学園としては、大いに共鳴するところがあり、手を挙げさせてもらいました。産学公連携で、職業の実践知と学術知を融合させることで、これまでの取組に厚みを持たせ、新しい時代の職業教育を展開できるのではないかと考えました。

 両者の融合には、やはり学術知がしっかり形成されていることが前提となり、やはり大学の仕組みに負うところが大きいと思うからです。

 本学園は、人に奉仕し、人をもてなし、人を幸せにするホスピタリティー産業、具体的には、栄養、医療・福祉、調理、製菓、製パン、食育、ホテル、ブライダル、ツーリズム分野の職業人を養成してきましたが、この度はその中から、食に係る分野を選びました。食は生きることそのものでもあり、いついかなる時も人間の活動とは切っても切り離せないものです。中でも、超高齢社会、人生100年時代を迎えたわが国では、健康・食・栄養を通じて誰もが生き生きと健康に暮らす健康長寿社会に注目が集まっていますし、世界的に見てもこれらは大きなテーマになっていて、今のわが国では数少ない成長産業、注目産業でもあります。

 一期生に求めるのは、その食――もう少し細かく分ければ健康・食・栄養、をテーマに、地域や企業のビジョンの実現に貢献するなど、積極的に創造と変革に挑戦する人となること。加えて、職業倫理と職業に対する使命感を明確にもち、それを生涯にわたって高め、人や地域社会に還元していきたいという気持ちを育てることです。

栄養マネジメント学科と和食ビジネス学科からスタート

 栄養マネジメント学科の定員は60名、和食ビジネス学科の定員は30名とし、京都栄養医療専門学校の管理栄養士科(定員40名)は廃科します。

 栄養マネジメント学科が目指すのは、管理栄養士の資格を取得してさらにキャリアを積み重ねていきたいという学生の集まりです。卒業後は病院管理栄養士など従来型のキャリアを目指すだけでなく、個人や集団、あるいは地域の特性に合わせて栄養管理や食育を推進する人材を育てることで、既存の大学や専門学校との差別化を図りたいと思っています。たとえば“地域包括ケアシステム”※1の中で、医師や看護師、福祉・介護など様々な専門職が連携して、住民一人ひとりに対してさまざまなサービスを提供する際、そのマネジメントに係わり、リーダーシップを発揮して、中核として多職種と連携し健康長寿社会を支える一員となるというのもその一つです。

 和食ビジネス学科では、専門知識と技能や技術を身につけ、調理師資格を取得するだけでなく、和食を学術的に追究し理解を深め、さまざまな地域や世界に和食・日本の食文化を普及する専門人材の養成を目指します。和食はユネスコの無形文化遺産に登録されただけでなく、昨年6月には文化芸術基本法の改正に伴い、はっきりと文化として位置付けられ、保存から継承・活用の時代へ入りました。また和食は、海外からの外国人観光客が、2020年には年間4千万人に達し、彼らによる消費が8兆円とも予想される中、その主軸でもあります。

 和食には、地域文化をしっかりと形成し、それを核として人々をつなぎ地域の連帯を創っていく力もあります。2022年に文化庁が移転してくる京都は、文化、学術、自然が融合して和食を支えている土地でもありますから、こうしたバックグランドについても学んでほしいと考えています。

 資格取得で終わるのではなく、事業や業務をマネジメントし、改善や革新を継続的に起こしていく力を育成するのも専門職大学の特徴です。さまざまな経営資源、ヒト・モノ・カネ・情報を活用しながら組織や地域の課題を解決する、あるいは企業の経営目標の達成をサポートする人材を育てるということです。栄養マネジメント学科では、マネジメント能力を持った管理栄養士の地域包括ケアシステムにおける活躍や、和食ビジネス学科では、フードサービス事業において繁盛店を創出し、自ら運営するなど、店舗運営のあらゆる工程に精通した人材を目指します。

 働き方改革の実現というテーマもあります。生産性が低いとされるわが国のフードサービス産業において、効率を高めながら、質を落とさず顧客満足度を高めていくにはどうすればいいか。優秀な人材がホスピタリティ産業やフードサービス産業に定着してもらえるような社会的な仕組みが構築できるよう、従来以上に産業界と連携していきたいと思います。

※1:高齢者が可能な限り住み慣れた自宅や地域で安心して自立した生活を営めるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスなどの包括的な支援やサービスを提供する。「地域包括ケア」の概念は共通で、「システム」は各自治体が、地域の実情、特性に合わせて独自に構築することとされる。

 

実務家教員と産学公連携で高度な実践力を身につける

 専門職大学の大きな特色ともいえる企業等での実習、特に4年制で20単位(600時間)以上の履修が要件とされる産学公連携による臨地実務実習ですが、連携先としてはすでに、栄養マネジメント学科では保健センターはじめ、健康産業施設、アスリート施設、企業給食、食品関連企業、学校、保育園、病院など60箇所から、和食ビジネス学科では料亭、割烹、仕出し、ホテル、旅館、福祉施設、食品スーパー、卸売市場など30の施設から受入れの承諾を得ています。またそこには、現場経験のある実務家教員を配し、学生一人ひとりのニーズに応じた親身な指導を実習施設と連携して行う予定です。ちなみに2学科平均で教員一人に対する学生数は、私立大学の平均よりもかなり少なく、きめ細かな指導を行う体制を敷いています。

 入学者は栄養マネジメント学科では高校新卒者が中心になると予想していますが、今後は食物栄養系のコースなどがある専門学科のある高校や総合学科高校との高大接続もさらに図っていきたい。和食ビジネス学科では、高校新卒者だけでなく、社会人の学び直し、学び重ねに応える体制も整えます。将来は3年次編入枠を設けて、2年制調理師養成施設の卒業者にも門戸を開く予定です。

 留学生の受け入れにも積極的に取り組みます。海外では和食がブームになっていますから、国の「海外における日本料理の調理技能認定制度」※2を活用するなどして、海外の日本料理技術者の育成にも貢献したいと考えています。また大学という枠組みを活かして、これまで難しかった日本にはない海外の食関連の高等教育機関と、単位互換などで連携し、世界的なネットワークの下で健康・食・栄養を追究、探求する専門人材を育てていきたいと思っています。
専門職大学の設立の趣旨でもある日本の成長産業分野を支える人材の養成という役割は、とても大きいと考えています。その期待に応える成果を出し、将来は専門職大学院の設置や学部学科の増設なども視野に入れ、さらに発展進化させたいと思っています。

 振り返れば本学園は、京都調理師専門学校と京都栄養士専門学校(現:京都栄養医療専門学校)が、専修学校制度発足と同時に京都で初めて専門学校として認可されました。京都調理師専門学校開校後はしばらく、ホテルをはじめ飲食業の多くは専門学校卒業の調理師の採用に消極的でした。しかし今や、調理の現場のみならず料理長やホテルの支配人にも専門学校出身者が多い。また、京都栄養医療専門学校管理栄養士科は、専門学校としては全国で初めて4年制の管理栄養士養成課程として認可され、国家試験の合格率も高い実績を挙げています。

 今、京都初の専門職大学の開学に向けて、期待に胸を弾ませるとともに、ここでの教育の成果、卒業生に対する社会、産業界からの評価が専門職大学制度の今後を占うと考えると、あらためて身が引き締まる思いです。

※2:海外において日本食・食文化と日本産農林水産物・食品の魅力を適切かつ効果的に発信するため、海外の外国人日本食料理人の日本料理に関する知識及び調理技能が一定のレベルに達した者を、民間団体等が自主的に認定できるよう、一定の要件をガイドラインとして定めたもの。
※記載の内容は予定であり、変更する場合があります。

学校法人大和学園理事長
(京都専門職大学学長予定者)
田中 誠二先生
1957年京都市生まれ。1981年コーネル大学ホテル経営学部卒業。1984年コロンビア大学経営大学院修士課程修了(M.B.A.)。2008年学校法人大和学園学園長。2013年 同学園理事長。2019年京都専門職大学学長就任予定。(一社)全国栄養士養成施設協会 副会長、(公社)全国調理師養成施設協会 副会長。(一社)京都府専修学校各種学校協会 会長、京都府私立学校審議会委員、京都文化藝術都市創生審議会委員。

 

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