女子大学初!!のビジネス学部(仮称)で、新しい時代に自立・自活する女性を育成
2020年には、新しい時代に即して自立・自活できる女性の育成を目的として、《東京の真ん中で、ビジネスを》のキャッチフレーズを掲げ、女子大学としては初となるビジネス学部(仮称)を開設する。学部長予定者で、経済学者の植田和男教授と、「組織開発」が専門で、長年企業で人材開発に携わってこられた岩城奈津専任講師に、新学部開設の背景と狙い、その独自性、育成したい人材像についてお聞きした。
今なぜ、女子大学にビジネス学部(仮称)か?
植田:ビジネス界や教育界で、近い将来、AIによって多くの仕事が奪われるのではないかという危機感が募っています。加えてIMFからは最近、「日本の女性が一番AIに職を奪われる可能性がある」というショッキングな報告も出ています。もちろんそのまま受け止める必要はありませんが、これからの社会を担う人々には、学生のうちからそのように言われる時代でも生き抜いていけるような知識やスキル、人間力を身につけてもらいたいと考えています。
他方、超少子化で労働力不足が深刻化するわが国では、これまで積み上げてきた経済力、人々の豊かな生活を維持するには働き手の確保が急務とされ、女性活躍推進法や働き方改革、改正雇用機会均等法など、数々の施策が国によって打ち出されています。
岩城:多様性の尊重が世界中に広がる中、女性の社会進出が進めば、社会全体の価値観も大きく変わってくる。ビジネス面では、女性を含む多様な視点から、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなるということもあります。
植田:女性の活躍に期待が高まる中、これから大学を目指そうというみなさんには、さらに大きなチャンスが膨らんでいます。
大きなチャンス、数字が示す二つの理由
2:しかし、先進諸国に比べ、女性管理職は13.0%、女性が代表を務める企業の全体に占める割合は7.69%と圧倒的に低く、今後の伸びしろは大きい。(下グラフ参照)
もちろん仕事や能力によっては、AIに取って代わられる可能性もありますから、そんなことにも揺るがない知識やスキル、人間力を身につけておく必要はあります。
岩城:女性にとってチャンスも多いが、一層挑戦的な時代にもなると。
専門分野の知識×リーダーシップ
植田:ではどんな知識やスキルが必要なのか。それを考えるヒントになる面白いデータ、記事があります。昨年の暮れにある新聞に出ていた「法務人材の需要が右肩上がり」というものです。法務を担うのは弁護士ですが、その単純な業務はAIに一番奪われやすい仕事の一つに挙げられています。ところがフィンテック(FinTech※)関連企業、たとえば中小企業の預金口座情報などから、AIによる分析ソフトを使って有価証券報告書を自動的に作ろうという会社などでは、新たなビジネスモデルを法務面、あるいは知財面から検証する必要が出てきて、そのための法務人材が求められているということです。もちろん従来のような定型的な知識だけでは務まらない。会計など、1)複数分野にまたがった基礎知識が求められるうえ、2)新しい領域で柔軟に問題を発見し解決していく能力、さらには3)社内あるいは社外の人と、また分野の異なる人と協調、協働して、目標の達成を図る力が求められます。
岩城:まさに、社会や企業の求める力であり、新学部のコンセプトの3つのコアでもありますね。
ビジネスに必要な4分野と、英語、法律、情報・統計を
植田:具体的には、まずは専門についてしっかり学ぶ。1,2年次では経済、経営、マーケティング、会計の4分野を軸に法律、情報・統計の基礎的な力、加えて実践的な英語力を身につける。さらに「共立リーダーシッププログラム」で、ビジネスに求められる人間力、つまりチームの中で自分も他者もいかしつつ、全体を成功へ導く力を身につける。そして3,4年次では、1、2年次で学んだことをベースに、課題解決型学修で、現実に発生する問題を自ら発見し、また解決していく力を身につける。専門分野の知識とリーダーシッププログラムで身につけたスキルを相乗的に高めていくのです。
「共立リーダーシッププログラム」とは?
岩城:従来の、上に立って人を牽引していくためだけのものとは違う21世紀型のリーダーシップ開発です。
これからの職場、組織では、正社員や契約社員、無期、有期雇用の同僚や部下が入り混じる。また、自分よりも年齢の高い部下や、専門性の高い後輩と仕事をしなければならないなど、上司と部下や後輩の関係も変わるでしょう。つまり多様な組織の中で自分の力を発揮し、全体に貢献できるような行動が求められる。これはまさにリーダーシップであり、態度スキルの一つとして、体系立った教育・トレーニングによって身につけることができます。
共立リーダーシッププログラムの特徴
「目標共有」「率先垂範」「相互支援」の3つの行動指標を掲げ、コミュニケーション力、問題解力、論理的思考力、プレゼンテーション力などのスキルを高める。4、5名単位のグループに分かれて企業の提示する具体的なテーマ、目標の下で活動し、自分にできること、できないことを互いにフィードバックしながら進める。評価は、ビジネスコンペでの優勝などだけでなく、様々な課題の下で、リーダーシップをいかに学んだか、どれだけチームの成果に積極的に貢献したかで行う。
これを1、2年の間に身につけておくと、3,4年次の学び、ゼミや専門領域でのグループ学修に必ずいきてきます。また過去の経験、たとえば高校時代の部活動なども異なる視点で捉え直すことができ、ビジネスに関することだけでなく、新たな課題の克服に、その《経験》をいかすこともできます。
植田:岩城先生はすでに、早稲田大学や立教大学でこのようなリーダーシッププログラムに取り組まれており、本学でも2017年から、学部横断型のプログラムとして実施されています【下コラム】。
2017年度は、香港や台湾の人のビールの消費をどう伸ばすかをテーマに、ジーリーメディア&サントリーと、2018年度は、セレクトショップ「FREAK’S STORE」を全国展開している(株)デイトナ・インターナショナルと連携し、レディースの売り上げを4倍にするというテーマで行った。
岩城:初めての試みでしたが、女子大でリーダーシップを学ぶメリットは女子学生だけだからこそ、それぞれの多様性を一層引き出す点にあると考えます。自分の強みを自信をもって語る学生も増え、来年度以降がとても楽しみです。
課題解決型授業で実践そのフィードバックも
植田:3、4年次では、専門ゼミも含め、課題解決型の授業が中心になります。
専門のゼミというと、従来は教える側と学生とが1対1で向き合うようなイメージでしたが、ビジネス学部(仮称)ではリーダーシッププログラムを引き継いで、学生をグループ分けし、作業やディスカッションを取り入れた授業にします。他にもアクティブラーニングやフィールドワークなどにも力を入れ、専門知識の定着をはかるとともに、コミュニケーションスキルやリーダーシップの一段の向上を図ります。企業との連携も積極的に行い、社会に出てから、短期あるいは中長期に直面するようなテーマをできるだけ選ぶようにします。
授業の進め方は、企業が大学へ来るケースや、大学から企業へ出向くケースなど柔軟に考えています。その一つの目玉が、丸の内・大手町に近いという立地を生かした「現代事情シリーズ」ですが、近くの出版社とも、「いかにマンガの売れ行きを伸ばすか」などをテーマにしたプログラムを計画しています。
岩城:女性はこれまで、様々なライフイベントによって、ビジネスにおいて必ずしも100%力を発揮できてきたわけではありません。しかし今や状況は大きく変わり、その活躍を後押しする政策も次々に打ち出されるなど舞台は整いました。
植田:新学部では社会へ出て即戦力として働くだけでなく、AI技術の進展もにらみながら、40年続けて働ける基礎力を育成したい。女子大初、《「卒業してから」を考え続ける学部》に期待してください。
ここにも注目!
入試では、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を評価するリーダーシップ入試(AO入試)や商業資格特別入試も行う。学びのサポートとしては、5限目に専門科目を配置せず、日常的に授業の振り返りなどに使える「フィードバックタイム」を設けることや、2年次の夏に行う、将来のキャリアについて教員ともども合宿して考えるサマーキャンプなどが注目だ。数学に関する入学前教育、入学後補習なども充実させるという。他に、担任が中心になって学びとキャリアについて定期的に全学生と面談を行うなど、キャリア支援の体制も整えている。
ビジネス学部(仮称)
学部長(予定)
植田 和男 先生
東大理学部・マサチューセッツ工科大学経済学部大学院卒、経済学博士。ブリティッシュ・コロンビア大学助教授、大阪大学助教授、東京大学教授を歴任。1998-2005年には日本銀行政策委員。2017年より共立女子大学新学部設置準備室長・教授。専門はマクロ経済学、金融論。最近の著書は『大学4年間の金融学が10時間でざっと学べる』KADOKAWA。東京教育大学付属駒場高等学校卒。
ビジネス学部(仮称)
専任講師(予定)
岩城 奈津 先生
国内大手電機機器メーカー営業職勤務、日米経営科学研究所(JAIMS)派遣等を経て、1996-2004年渡英。英国国立ウェールズ大学カーディフ校。ビジネススクール,経営学修士(MBA)、博士課程単位取得後退学。専門は組織行動論。㈱クオリア設立に関わり、2018年3月まで12年間D&I。コンサルタントとして組織開発、リーダーシップ開発に従事。2018年4月より現職。