卒業生が後輩に伝える“自分流”の生き様
“人生100年時代”に向けて、日本では新たな経済社会システムがデザインされつつある。一方で、人生そのものをどのようにデザインするかは、人それぞれである。多様な選択肢が考えられるが、まだ実社会を知らない若者たちにとっては、その判断基準を持つどころか、デザインする必要性を感じることさえ難しいだろう。
こうした課題を見据え、帝京大学八王子キャンパスでは長年にわたってキャリア教育の拡充に努め、入学直後から取り組める教育コンテンツづくりを推進してきた。授業化され、単位取得が可能なキャリア科目数は、現在52科目。計1万5千人におよぶという履修者の多さに、学生の意識の高まりが表れている。
今年度からラインアップに加わった科目がある。『卒業生に学ぶライフデザイン』と題し、人生を描くために役立つヒントや気づきを与えるべく企画された。帝京大学が輩出した15万人を超える卒業生の生き様は、まさしく“生きた教材”。講師を務める先人たちの肩書きも、政治家、弁護士、プロスポーツ選手、女優など実に多様である。
この日、第6回目の講義に登壇したのは、“おぐねぇー”として活躍中のヘアメイクアップアーティスト、小椋ケンイチ氏であった。これまでに400人以上の女優、タレント、モデルなどを担当。おネェキャラの人気タレントとしてテレビ番組やCMなどにも多数出演している。
帝京大学文学部心理学科の1期生として入学した小椋氏だが、ヘアメイクアップアーティストになる夢をあきらめきれず、在学中にダブルスクールで美容学校の通信教育を受け、美容師免許を取得。その後ヘアメイクを学び、輝かしいキャリアを切り拓いていく。そんな小椋氏が後輩たちに熱く語ったのは、ライフデザインの礎になったという大学時代の過ごし方であった。
「一生働くとしたら、大学での4年間は“寄り道”と捉え、自分がやりたいと思うことには何でも挑戦した」「“自由”は大学生の特権。時間を最大限に活かし、自分と向き合えたから個性を見つけることができた」「4年間フルパワーで生きたという実体験があるから、今でもフルパワーで頑張れる」「どんなに小さなことでもいいので、具体的な目標を立ててクリアしていくと進むべき道が見えてくる」
このような実体験や教訓は、将来の進路や職業選択と向き合う上でも、勇気や自信を与えるに違いない。聴講した学生たちに感想を聞いてみた。
「今できる挑戦を、今のうちにやります」「もっと自分の可能性を信じて、夢を持って生きてもいいと思えました」「気づいたのは、自ら経験の機会をつくり、行動に移すことの大切さです」「自分を他人と比べたり、枠から外れない努力をすることは、やめにします」など、小椋氏の生き様から多くのことを学んだ様子だった。
人生は、一人で考え込んでもデザインできないもの。答えも無数にあるからこそ、このキャリア科目には毎回数多くの学生が詰めかけるのだろう。小椋氏のように、『人生を“自分流”に生きて輝ける人材を育てたい』。それが、帝京大学におけるキャリア教育の根底に流れるISM(イズム)である。