日本にいながら、海外と同等の学びができる大学をご存じだろうか。東京・池袋にある北京語言大学東京校では、中国の北京本校と共通のカリキュラムを実施し、語学力や中国文化・経済などに秀でた人材を輩出している。

外国大学の日本校で過ごす大学生活とは、どのようなものだろうか。卒業生の菅野ひなたさんに、在学中の経験や就活についてうかがった。

 

北京語言大学東京校 卒業生

菅野ひなたさん

2024年4月より、株式会社エイチ・アイ・エスに新卒入社。在学中は中国語主専攻・中国語副専攻を選択し、中国語と中国文化を重点的に学んだ。

 

日本の大学卒業資格は取れる? 外国大学の日本校

 日本の文部科学大臣指定の外国大学日本校である北京語言大学東京校。北京語言大学北京本校で実施している教育方法を日本に持ち込み、グローバルで実践的な学びを提供している。

 そんな北京語言大学東京校に魅力を感じ、進学を決めた菅野さん。しかし両親から心配された点があったという。

「親からは、北京語言大学東京校で日本の大学の卒業資格を得られるのか心配されたことを覚えています。その後学校説明会に参加し、きちんと卒業資格がもらえることがわかるとすぐに賛成してくれました。」

 文部科学大臣から指定を受けた外国大学日本校では、卒業時に日本の大学院の入学資格や、日本の大学との単位互換が認められる。つまり日本の大学で学んだ卒業生と同等の資格を得られるのだ。

 さらに北京語言大学東京校では、日本文科省に相当する中国教育部からも、卒業資格と文学士学位が認定される。日本と中国の卒業資格をどちらも得られるのは、学生や保護者にとって大きな魅力だ。

実践的な中国語教育と、グローバルな環境が魅力

 もともとは公務員を目指し、横浜商業高校で簿記などを学んでいた菅野さん。それでも「もし夢である旅行業界に挑戦できたら」と思い、大学進学も視野に入れていた。そんなとき興味を持ったのが中国語の勉強だったという。

「中国人の知人がいたので、中国を身近に感じていたんです。幼い頃から独学で少し中国語に触れていましたが、大学で本格的に勉強したくなり北京語言大学東京校に興味を持ちました。それに、もし憧れていた旅行業界をめざすとしたら外国語力が必要になるだろう、と。高校までは外国語も学力もあまり自信がなかったので、大学で自分を磨ければという期待もありました。」

 北京語言大学東京校では、中国語ネイティブの教員による授業を実施。入学したばかりの頃は日本語での解説もあるが、1年前期終了時には、教員はほとんど中国語で話すようになるそうだ。中国語を聞く時間や話す時間を多く設けることで、学生たちは実践的に語学を習得する。

「授業は少人数制なので、先生と深く関われてよかったです。授業中のやりとりも多いですし、質問もしやすくて。みんなで先生の誕生日を祝ったこともありました。また、中国人の先生が多いので、語学だけでなく文化も学べたのが嬉しかったです。」

 学生には、アジアやヨーロッパなどさまざまな地域からやってきた留学生も多い。キャンパス内のラウンジでは、学年や国籍に関係なく言葉を交わす姿が見られた。

「さまざまな価値観を持つ人と会話をしていくうちにコミュニケーション能力が上がったと思います。日本では当たり前のことが、外国人にとっては当たり前ではない、ということも知りました。だからこそ日本の常識を押しつけないようにしよう、先入観を持たずに接するようにしよう、と心がけられるようになりました。」

 中国に留学してグローバルな経験を積むこともできる。北京語言大学東京校では、条件を満たした希望者は全員北京本校に留学できる。期間は半年から2年までとさまざま。学生の希望に応じて柔軟に対応している。北京本校で取得した単位は東京校の単位としても認定されるため、4年間での卒業が可能だ。

 菅野さんは2年次からの留学を希望していたが、新型コロナウイルスの流行により断念。それでも大学4年生の11月から、1ヶ月半の短期留学に挑戦した。

※本来の留学は最短半年から。新型コロナウイルスの影響で渡航できなかった学生たちに対して、特例として1ヶ月半からの留学が認められた。

「東京校の先生が同行して北京で生活するための手続き(入寮の手続きや銀行口座の開設、携帯電話の契約など)を一緒にやってくれたり、その後もオンラインチャットで質問などができたりして心強かったです。留学でいちばん嬉しかったのは、友達がたくさんできたこと。今でも連絡を取り合っていて、いい出会いだったと感じています。しかも中国語でコミュニケーションがとれるので、勉強した甲斐がありました。」

あきらめていた旅行業界への挑戦を決意

 北京語言大学東京校で語学やグローバルなコミュニケーション力を磨いた菅野さん。その経験は、就職活動にも大きな影響を与えたと振り返る。

「高校生の頃から憧れていたのは旅行会社。でも旅行業界は人気が高いですし、有名大学に在籍していないと難しそうなイメージがあったので一度はあきらめていたんです。でも中国語を話せるようになると、旅行会社に入社したい気持ちが強くなって。さらにグローバルな交流を積み重ねたことで自信がつき、挑戦しようと決心できました。」

 とくに就活で役立ったのは中国語の語学力と、国際的な経験だ。

「就活では早慶上智の学生も珍しくなく、英語が使えるのも当たり前でした。そんななかで中国語ができる、というのは自分の個性のひとつになったと思います。中国は人口も多いですし、中国語を使えるに越したことはありません。
『学生時代に力を入れたこと』では、日本国内で積極的にグローバルな場に参加した経験をアピールしました。コロナ禍で、大学時代に留学はできないだろう、と思った時期があって。ならば国内にいながら国際交流をして自分の強みにしようと決めました。たとえば日本語学校の生徒とのパーティーに参加したり、日本語の勉強会を中国語でサポートしたりと、大学から紹介してもらった国際交流の場に積極的に参加しました。」

 北京語言大学東京校で3年次と4年次に受講したキャリアに関する授業も、ためになったという。

「キャリアの授業では就活の情報をたくさんもらえてありがたかったです。留学生とチームを組んで日本語のプレゼンテーションをする練習も、力になりました。語学力のレベルが違う、準備の時間がそれほど確保できない、という状況下でひとつのものを作りあげていくのは大変でしたが、その分達成感も大きかったです。こうした経験は、きっと今後も役立つと思います。実際に入社後の新人研修でもグループでプレゼンをする機会があり、チームワーク作りに貢献できました」

 卒業後も、職場やプライベートなど、さまざまな場面で大学時代の経験が活きているそうだ。

「勤務先が渋谷なので中国人と会わない日はない、というくらい今でも中国は身近な存在です。中国の方が困っていたら助けられますし、友達とも中国語でコミュニケーションがとれます。こうした生活は、高校生の頃の自分からすると考えられません。
また、私は台湾が好きでよく旅行をするので、現地で中国語が通じたときは学んでよかったと思いました。英語が通じない場所に行けたり、飲食店での注文がスムーズにできるようになったり。『成長したな、自分』と実感しました。

職場では先輩が中国語を使って接客や電話対応をしているので、私もいつかそうなりたいです。まだ知識不足な場面が多いので、まずは独り立ちして仕事をすることが目標。中国語ができる、という強みを活かしてお客様のお手伝いができるプロになりたいです。」

 最後に菅野さんは、北京語言大学東京校の魅力をこう締めくくった。

「この大学への進学を悩んでいる人がいたら、『迷う必要はない!』と言いたいです。できなかったことができるようになる喜びがありますし、キャンパス内がとてもグローバルで先生や留学生とも濃く交流できます。それほど不安に思わず、ぜひ興味を持ってほしいです。」

 日本と中国の大学卒業要件を満たし、中国語力とグローバルな経験が得られる北京語言大学東京校。大学での学びは学生の自信になり、進路の選択肢を広げている。日本でも世界でも活躍する人材を目指すのであれば、進学先の候補に入れてみてはいかがだろうか。

大学ジャーナルオンライン編集部

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